本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

And I Love Her

アルバム5曲目にして、ポールのヴォーカル曲が初登場です。ただし「A Hard Day's Night」や「If I Fell」でポールの見せ場があるので、初登場感はそれほどありませんが。「If I Fell」「I'm Happy Just To Dance With You」に続いて、映画ではリハーサルのシーンで演奏されました。当時、音楽的には絶好調だったジョンに対し、ポールの方はルックス面が絶好調で人生のピークであったと思われます。この曲の演奏シーンで当時も今もどれだけの女性がメロメロになったことか(笑)。

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I'm Happy Just To Dance With You

レコーディングは1964年3月1日に行われたのですが、これは彼らにとって初の日曜日のレコーディングとなりました。翌日3月2日から始まる映画『A Hard Day's Night』の撮影に、何とか間に合わす為の処置だったと思います。最初に「I'm Happy Just To Dance With You」が録音され、次に録音された「I Call Your Name」も当初は映画に使われる予定でした。後に「A Hard Day's Night」を録音したことで、「I Call Your Name」はEP盤に回されることになりました。と言うことで、この曲のレコーディングは映画の撮影開始まで待ったなしの状況でした。映画用の曲があと2曲足りない状況で、何か何でも完成させなければいけなかった曲です。ビリー・J・クレーマーに提供した「I Call Your Name」をセルフカバーしていることからも、切羽詰まった状況だったことが伺われます。

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If I Fell

映画の中では、テレビ局のスタッフに自分のドラムセットを触られ機嫌を損ねたリンゴのため、なだめるようにジョンが歌いだしてリンゴの機嫌が直る、何ともイカしたシーンに使われています。ところで、このシーンの演奏は「I Should Have Known Better」のスタジオ演奏シーンと同じく、レコードよりキーが半音低いです。その理由は「I Should Have Known Better」のところに書いたので、詳しくはそちらを見てもらうとして、このシーンではキーが下がる原因になっているテレビモニターは写っていません。「I Should Have Known Better」のところに書いた理由では説明がつかないのですが、唯一考えられるのはテレビモニターが写るシーンはあったけど、何らかの理由で最終的にカットされたのではなかろうかと...。かなり憶測で語っているので、適当に聞き流してください(笑)。

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I Should Have Known Better

映画と同様、アルバムでも2番目に登場するポップな楽曲です。彼らのルーツであるR&Bモータウンのガールズポップ臭が希薄で、フォークソングっぽくも感じます。フォークソングといってもトラディショナルなやつではなく、日本のフォークソング風なんですが(笑)。彼らの作品で同系統の曲が思いつかず、結構珍しい作風だと思っています。キーGメジャーのダイアトニックコードで構成されていますが、唯一使われているノンダイアトニックコードのB7の存在が、お気楽なフォークソング風になるのを食い止めてビートルズらしい作品にしています。

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A Hard Day's Night

7枚目のシングル曲、かつ同名の映画のタイトル曲でもあります。リンゴの独り言が映画のタイトルに採用され、ビートルズはタイトルだけ決まっている曲を作るという課題を突き付けられますが、ジョンがその課題をクリアしました。レコーディングはアルバムのA面収録曲(映画挿入曲)の最後、1964年4月16日に行われました。9テイクを録音し、第9テイクがベストとして採用されています。

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McCartney III

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アルバムタイトルを見ると「McCartney」や「McCartneyII」との類似性を求めたくなりますが、ビートルズやウイングスの解散前後に制作したこれらのアルバムとは、似ているのはタイトルだけで全くの別物だと思います。ウイングス解散以降バンド名義で活動をしていないポールにとって、ソロアルバムを発表するのは全くの通常営業。プロデューサーやバックバンドを起用していないのが今作の特徴ですが、ポールの通常営業の範囲内と言って差し支えないでしょう。

当初は発表予定ではなかったと言う制作過程や、ポールがプロデュースしてるってことで(苦笑)、内容にはあまり期待していなかったのですが、これは良いアルバムじゃないですかね。ポール自身のパフォーマンスやサウンド自体の完成度が高い訳ではありませんが、良い曲が多くて聴いていて疲れない。何より、聴いていて楽しいってことに尽きるのではないでしょうか。

これまでのポールの活動を振り返ると、逆境時に名作を生み出しているので、そういう意味では昨年からのパンデミックはこれ以上ない逆境な訳で、ポールが名作を生み出すには申し分ない条件だったと言えます。ただ、今作に関してはポール自身が楽しんで制作したことが一番かと(笑)。過去にはポール自身が楽しんで制作した作品は、我々ファンには楽しくないことが多かったのですが(苦笑)、今作はポールが楽しんだことをファンも共有できる作品になってくれてホント良かった(笑)。

個人的なお気に入りは以下の通りです。

・Find My Way

・Women And Wives

・Lavatory Lil

・Slidin'

・Seize The Day

・Deep Down

『A Hard Day's Night』その2

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社会現象とでも言うべきイギリスでの大成功を追い風に、ビートルズの次なる目標は自ずとアメリカ市場に向けられました。ビートルズ以前のイギリスのビッグスター達が挑んだものの、悉く跳ね返された高い壁です。1964年2月1日に「I Want To Hold Your Hand」がビルボード誌のチャートでNo.1を獲得したことが追い風となって、決死の覚悟で臨んだ1964年2月のアメリカ初上陸は大成功に終わりました。「決死の覚悟」は少々大げさな気もしますが、ワシントンD.C.でのコンサートの開演前、嘔吐を繰り返しコンサートのオープニングをジョージに譲らねばならいくらい、ジョンは強烈なプレッシャーを感じていました。このエピソードから、ジョンがアメリカでの成功を強く望んでいたであろうことが伺えます。アメリカ初上陸での大成功に手ごたえを感じたであろうジョンが、アメリカ制覇に向けて勝負をかけた作品集がアルバム『A Hard Day's Night』です。

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