本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

I Saw Her StandingThere

アルバムのオープニングナンバーに打ってつけの曲ではないでしょうか。何と言っても冒頭のポールのカウントが素晴らしいですよね。このカウントがこの曲のノリを作ったと言っても過言ではないでしょう。注目すべきは、カウント「4!」の裏からなだれ込むように演奏が始まっていることで、ここが結構重要なポイントではないかと思っています。

 

オーソドックスなロックロールかと思いきや、コード進行の一捻りとか、2人のヴォーカリストがハモってみせたり、関西弁で言うところの「イキった」曲にしたがるポール丸出しの曲に仕上がっていると思います。

 

演奏の方は、印象的なポールのベースが楽曲を強烈に牽引していますが、チャック・ベリーの「I'm Talking About You」のフレーズを拝借していることは広く知れ渡っています。ポールによると、元々は違うフレーズで弾いていたところ、「I'm Talking About You」のフレーズを弾いたら曲に合っていた的な発言をしていたので、拝借したのはベースフレーズだけで曲想まで頂いた訳ではありません(笑)。

 

ハイレゾ音源でジョンのギターのフレーズが随分と聴き取り易くなりましたが、思っていたほどキッチリと決められたリフを弾いてる訳ではなく、コードカッティングを中心に結構自由に演奏しています。考えてみれば、ジョンがそんなにキッチリと弾く訳がないか(笑)。いかにもリッケンって感じの音色で、決して良い音ではありませんが楽曲には合っています。

 

ハイレゾついでに言うと、ハイレゾ音源をもってしても、リンゴのバスドラの音を聴きとるのが非常に困難です。当時からリンゴのドラムに関して「バスドラが鳴らせない」って揶揄する人もいたようなんですが、そう言われても仕方ないって感じですね。ライブ映像を見る限りバスドラは踏んでいるようですが、レコーディングでは音が拾えてないですね。そう考えると、後年のバスドラをミュートしてアタック音を強調する方法は、大発明だったんだなって思います。あと、リンゴ独特のシンバル扇ぎ打法ではなく、ハイハットを閉じて叩いていますね。

 

この曲のギターソロをジョージ自身が嫌っていて、それが原因で赤盤にこの曲が収録されなかったって何かで読みましたが、その噂の真偽のほどはともかく、タイム感が独特のジョージの個性が出ていて、悪くないと思うんですけどね。ただ、ギターソロよりも歌のバッキングに回った時の方が彼の良さが出ているように思います。

 

この曲について常々思っていることですが、ビートルズの4人が演奏してこその「I Saw Her Standing There」であって、それ以外の人が演奏したものの多くは全く別の曲になってしまっています。この曲を作った本人がそこにいても、ビートルズの「I Saw Her Standing There」が馴染んだ耳には違和感しかありません。ビートルズが演奏すると、メンバー4人がまるで徒競走のように先を急いで突き進む性急感があって、それがこの曲の最大の魅力だと感じています。この性急感は、ビートルズの4人が演奏した時のみ感じることができます。前述の、カウント「4!」の裏から演奏が始まっている点とか、この性急感が端的に表れてないでしょうか。

「I Saw Her Standing There」

こっちは「I'm Talking About You」

意外と良い感じの、キンモクセイかまやつひろしのカバー