本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

From Me To You

アルバム『Please Please Me』が発売される前、1963年3月5日にレコーディングされています。

 「Please Please Me」に続くシングル曲としてレコーディングされましたが、当初「Thank You Girl」の方がシングル候補だったそうです。「From Me To You」はライブツアーの移動中のバスの中、2月の後半に楽曲が出来上がったそうで、こっちの方が出来が良かったからシングルとして採用され、「Thank You Girl」はB面に回りました。「Please Please Me」に続くシングルとしては「Thank You Girl」じゃ楽曲が弱すぎるので、これは正しい判断だったかなぁと思います。もし仮に「Thank You Girl」がシングルとして発売されていたら大したヒットもせず、ビートルズは「Please Please Me」のヒットだけの一発屋としてイギリスの音楽史に埋もれていたかもしれません。一発屋という表現を使いましたが、一発当てることすら出来ない人が大半の業界にあって、一発屋は成功者の部類だと個人的には思っています。

ジョージはデュオ・ジェットを弾いてると思われます。歌のバッキングではコードカッティング中心に単音のフレーズとかを織り交ぜる、若いのにセンス溢れるプレーを聴かせてくれます。リード・ギターもジョージですが、こちらはオーバーダビングしたものです。ジョンはJ-160Eをアンプに繋いでいますが、例によってヴォーカル・マイクが生音も結構拾っています。それに加えて、ジョンはハーモニカをオーバーダビングしています。当初イントロはジョージのリードギターのみの予定でしたが、ジョージ・マーティンの提案でヴォーカルとハーモニカを絡めることになりました。ハーモニカを持参していなかったジョンは、スタジオ内で借りたハーモニカを使ったそうです。見せ場を取られた(苦笑)ジョージ的には面白くなかったかもしれませんが、ジョージのギターにヴォーカルとハーモニカが絡んだことで、聴き手にインパクトを与えるイントロになったと思います。ポールのベースは序盤は一拍と三拍のみのシンプルなプレーですが、Bメロを挟んでAメロに戻ると手数が増えます。大半がオーソドックスなプレーですが、間奏ではジョージのリードギターと同じフレーズを弾いています。これもジョージ的には面白くなかったかもしれませんね(苦笑)。リンゴはハイハットを閉じてプレーしています。イントロから歌に入るところ、Bメロの終わり、エンディングで派手なプレーが聞けますが、基本的にはシンプルなプレーに徹しています。

この曲の最大のポイントはBメロの存在です。『Anthology』の映像でポールがBメロの転調を自画自賛していたそうですが(見たことあるかもしれませんが記憶にない)、この転調がなかなかの曲者。AメロのキーはCですが、BメロはキーCのダイアトニックコードにはないGマイナーから始まります。たった1小節しか使われないGマイナーが、楽曲全体にぐっと深みを与えます。そのあとC7→F→Fとコードが進行し、キーがFに転調したことが分かります。これに続くのがキーFのダイアニックコードにないD7なので、ややこしくなります。D7→D7→Gのコード進行から、Bメロ中にもう一回転調してキーがGに変わったことが分かります。最後、Gメジャー→Gオーギュメントの流れでキーCに戻りますよ感を出しつつ、無事にAメロに戻ります。メジャー→オーギュメントの流れは「Ask Me Why」にも登場しており、この部分はジョンのアイデアではないでしょうか。なんとなく聴いてると、目まぐるしく転調していることを聞き逃してしまいそうですが、移動中のバスの中でこんなアイデアが生まれることが凄い!

大ヒットした「Please Please Me」に続くシングルで、ビートルズのその後の歴史を決定づける非常に重要な曲でしたが、営業的にも音楽的にも大成功を収めました。アルバム『Please Please Me』発売の約半月後に発売されたことから、アルバム未収録ながら『Please Please Me』の販促にも大貢献したと思われます。シングルA面が「Thank You Girl」にならなくて、ほんと良かった(苦笑)。