本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

I'll Get You

シングル「She Loves You」のB面曲として1963年7月1日にレコーディングしています。「She Loves You」と同じく2トラックのオリジナルテープが早々に処分されており、レコーディング時のテイク数のデータも残っていません。

 「She Loves You」を作曲した時期は、真偽の程はともかくその5日前の1963年6月26日って情報がありますが、この曲の作曲時期については今まで見た記憶がありません。ただ、この曲のコード進行には「She Loves You」との共通点があって、この曲の作曲の過程で得たノウハウを「She Loves You」の作曲に活かしたのではと思っています。

この曲のキーはDメジャーですが、Aメロ中にDメジャーのダイアトニックコードにはないAマイナーが登場します。歌詞で言うと"It's not like me to pretend"のto pretendの部分で、一瞬悲しい感じのメロディになる部分です。ここで使われるAマイナーは、ダイアトニックコードの5番目のコードをマイナーコードに置き換えた、ドミナントマイナーコードと言うそうです。「She Loves You」では、ダイアトニックコードの4番目のコードをマイナーコードに置き換えた、サブドミナントマイナーコードが使われていましたが、それとの類似性を感じます。またBメロの最後"So You might as well resign yourself to me"の部分では、DメジャーのダイアトニックコードにはないEメジャーが使われています。ダイアトニックコードの2番目のコードをメジャーコードに置き換える手法は、「She Loves You」の冒頭と共通するものです。てな感じで、「I'll Get You」の作曲中に覚えたコードの使い方を次の曲の作曲に活かし、出来上がったのが「She Loves You」ではないかと思った次第です。逆に「She Loves You」で覚えたワザを使って作曲したのが「I'll Get You」なのかもしれませんが。

「She Loves You」と同じく歌と演奏は別録りではないかと思います。演奏部分の録音の時はジョンはハーモニカに専念したのではないかと。一曲通してハーモニカが鳴っているので、別録りしない限りジョンのヴォーカルを録音できないですよね(笑)。YouTubeで見る事ができるこの曲のライブ・バージョンでジョンはギターを演奏していますが、レコードではハーモニカに専念したのでギターは弾いていないと思います。そのライブ・バージョンの映像では、ジョージはリッケンバッカー425を弾いていたのですが、音声と映像が合っていなかったのでライブ・バージョンで使っていたかは定かでありません。レコードでは、カントリージェントルマンを弾いていたと思われます。ポールのベースはリズムの変化が激しく、この頃には珍しく八分音符弾きも聞くことができます。後年のようなメロディアスなフレーズはなく、ルート音中心ですが。リンゴはひたすらツイストのリズムを叩いています。基本的にハイハットは閉じていますが、Aメロの最後の方"I'll get you in the end"のところの一瞬だけオープンにしています。

Bメロはジョージも加えて3人でハモり、ジョンとポールの間のメロディをジョージが歌っています。3声のハモりの時のジョージあるあるで、一番難易度の高いところをジョージが担当しています。ハモりに気を取られ過ぎたからか、2ヶ所ほど歌詞を間違っています。「She Loves You」と同じようにテープの切り貼りとかで誤魔化したら良いのにって思うのですが、この曲に限らず歌詞を間違えていてもOKテイクになっている例はあるので、彼らにとって大した問題ではないのでしょう。

A面の「She Loves You」の出来が良すぎるので、比較するとさすがに見劣りしますが、彼らの音楽的な成長ぶりが感じられる佳曲ではないでしょうか。