本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

This Boy

1963年10月17日、「I Want To Hold Your Hand」の後にレコーディングをしています。ビートルズのシングルB面曲の中では人気の高い曲ではないでしょうか。映画『A Hard Day'S Night』で印象的に使われており、この曲の人気に一役買っているように思います。

 当初この曲にはジョージのギターソロがあったらしいのですが、ジョージ・マーティンが納得できるような出来ではなかったらしく、レコーディング当日に急遽Bメロを作ってジョージのギターソロと差し替えたそうです。このエピソードを知った時、公式にリリースされたテイクのBメロからAメロに戻るところのテープの切り貼りは、ジョージのギターソロだったところをジョンが歌うBメロに置き換えたからだろうと思いました。しかしながら、YouTubeにアップされているこの曲のアウトテイクでBメロが歌われていることから、OKテイクの前のレコーディングの過程でギターソロは没になっておりテープの切り貼りは別の理由によると思われます。このBメロの部分だけ、ジョンのヴォーカルがダブルトラックになっています。

この曲のキーはDメジャーです。Aメロのコード進行はセオリーの範疇ですが、急遽作ったというBメロには工夫が見られます。"Oh, and this boy would be happy"のhappyの部分、DメジャーのダイアトニックコードにないF#セブンスを使っています。そして"That boy won't be happy"のhappyの部分、今度もDメジャーのダイアトニックコードにないEセブンスを使っています。Bメロに2回登場してくるノンダイアトニックコードが、楽曲の盛り上がりを演出していると言っていいでしょう。

以前「A Taste of Honey」のレビューで、「I've Just Seen A Face」までブラシを使っている曲はないと書いておりましたが、この曲でもリンゴはブラシを使っていました(苦笑)。Aメロではひたすらハイハットを刻み、スネアとバスドラの登場はBメロのみと演奏はシンプル。しかしながら、楽曲全編にわたりドラムはダブルトラックになっており、録音機器が4トラックになったメリットを活用しています。楽曲を牽引しているのは細かくリズムを刻むエレキギターですが、よく聞くとこれもダブルトラックになっています。恐らく2本ともカントリージェントルマン(ジョージ)ではないかと思います。エンディング近くのオクターブのフレーズもカントリージェントルマンかと。J-160E(ジョン)を生で使っており、こちらはゆったりとしたプレーです。J-160Eもイントロはダブルトラックになっています。

ジョン、ポール、ジョージによる3声のハーモニーがこの曲の最大の聴きどころでしょう。「ビートルズっぽさ」の要因の1つに、3人によるハーモニーが挙げられると思います。ポールによると「To Know Her Is To Love Her」で3声のハーモニーを覚えたとのことですが、要はデビュー前から磨きをかけていたってことですね。パートは上からポール、ジョージ、ジョンの順番ですね。歌うにはシビアなこの曲を、ステージで披露したことは驚異としか言いようがありません、しかも演奏しながら。彼らにとってみれば、下積み時代のライブと同じようにやっただけって感覚なのかもしれませんね。

ジョージには気の毒な話ですが、ギターソロに変わってBメロとしてジョンの熱唱を挟んだことでメリハリができて、楽曲のグレードが格段に上がったと思います。シングルのB面に甘んじるには勿体なすぎる名曲ではないでしょうか。