本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

All I've Got To Do

ジョンによる「アーサー・アレクサンダー3部作」の最後を飾るナンバーは、ジョン自ら書き上げたオリジナル曲です。ちなみに他の2曲は「Anna(Go To Him)」と「Soldier Of Love」です。

ジョンがアメリカ市場を意識して書いた曲と言われています。電話をかけて彼女を呼ぶ(逆に彼女からの電話で彼女の元に向かう)シーンが歌われていますが、ジョンによると1960年代のイギリスの若者にとって電話は生活に根付いていなかったらしく、ジョンの実体験に基づいた歌詞ではないようです。

全ての楽器がリズムを刻むのに専念しており、その中で特筆すべきはポールとリンゴのリズム隊でしょうか。リンゴは「Anna(Go To Him)」を踏襲したスタイルで、少ない手数で楽曲をピシッと引き締めています。ポールはベースの和音弾きを初めて披露しています。「I Want To Hold Your Hand」でもベースの和音弾きが登場していますが、録音順ではこっちの方が先です。ちょっとしたアイデアなんですが、こういうのが積み重なって後年の革新的な作品に繋がっていくんでしょうね。ジョージはカントリー・ジェントルマン、ジョンはJ-160Eでリズムを刻んでいますが、恐らくジョンはギターをオーバーダビングしているのではと思います。ステレオミックスを聴くと、ジョージのカントリージェントルマンの後ろで鳴っているのとは別に、ジョンのヴォーカルの後ろでもギターが鳴っているのが確認できます。ヴォーカルをオーバーダビングした際、ギターも弾いていたのではないでしょうか。

この曲はコード進行、楽器演奏がシンプルな分、ジョンのヴォーカルが際立っています。アーサー・アレクサンダーのカバーの特徴は、ジョンの夕焼けヴォーカルが聴けることですが、3部作の最後を飾るだけあって極上の夕焼けヴォーカルが堪能できます。夕焼けヴォーカルって何やねんってツッコミが聞こえてきますが、夕焼けに向かって叫びたくなるような切なさに満ち溢れたヴォーカルのことを、勝手に命名しております(笑)。この曲の録音時点で若干22歳だったとは思えない、艶っぽいヴォーカルは一体なんなんでしょう。このヴォーカルだけで楽曲が成立するから、バックの演奏は余計なことをしなくて良いのです。ところどころで聴けるポールのハモりも秀逸なんですが、ちょっと相手が悪すぎた(苦笑)。ジョンのこの一世一代のヴォーカルを聴いて、ブライアン・エプスタインも胸を熱くしたであろうことは間違いありません(爆)。

この曲、僕の知る限りライブでは演奏していないはずです。ってことは、レコーディングした1963年9月11日の15テイク(1つはオーバーダビング)しか演奏されていません。何とも勿体ない話ではないでしょうか。