本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

Little Child

この曲も「Don't Bother Me」と同じく、1963年9月11日と12日にかけてレコーディングされています。9月11日のレコーディングでは2テイクだけ演奏、第3テイク以降は12日にレコーディングして完成させています。

 この曲のコード進行は、キーEメジャーのダイアトニックコードのうち、E(E7)とAとB7のいわゆるスリーコードでほぼ構成されていますが、ところどころでB7の前にノンダイアトニックコードのF#7を挟んでいるのがポイントでしょうか。ダイアトニックコードの2番目のコードをマイナーからセブンスに置き換えてドミナントコード(この曲だとB7)に繋げる手法は、ジャズのスタンダードナンバーでよく使われることを「She Loves You」の記事で触れましたが、それです。もう一つのポイントが、フェイドアウトの部分で繰り返される"Baby,take a chance on me"のコード進行。反小節ずつF#7→B7→E→C#7が繰り返されるのですが、最後にC#7を挟まずEからF#7に戻っても違和感ないんですけど、わざわざ楽曲本編に登場しないノンダイアトニックコードのC#7を挟むのがビートルズの拘りなんでしょう。

この曲の楽器編成についてですが、ネットや書物で見る限りジョージがデュオ・ジェットを弾いてることになっています。残念ながら僕にはギターの音が全く聴こえません(爆)。この頃カントリー・ジェントルマンを手に入れているのに、デュオ・ジェットに戻すとは思えないのですが。当然ジョンらしきギターの音も聴こえませんが、この曲に関してはジョンはハーモニカに専念して、ギターは弾いていないと思っています。そのハーモニカですが、イントロはダブルトラックに聴こえます。この曲はハーモニカから始まるので、恐らくベーシックトラックでもイントロ部分だけ吹いているのではないでしょうか。ハーモニカのオーバーダビングは、歌中のバッキングと間奏は別テイクのようですが、そのどちらかでイントロと被せたのではないかと思います。ジョンのハーモニカと一緒に、ポールがピアノをオーバーダビングしています。レコーディングでポールがピアノを弾くのは、この曲が初めてです。元気が良いというか荒々しいプレーですが、後から録音したにもかかわらず、楽曲全体を牽引しているかのような強烈なノリを感じます。

ヴォーカルはジョンとポールのデュエット...ですよね、多分(苦笑)。正直、ジョンのダブルトラックと判断つきかねるのですが、楽曲最後のフェイドアウト部分の掛け合いで、ジョンとポールのデュエットなんだろうなぁって思った次第です。元来、声質が全然違う2人のハズですが、デュエットで歌うとなぜか同じ声に聴こえるんですよね(汗)。この曲では、楽曲の大半をユニゾンで歌ってますが、"I'm so sad and lonely"のところだけハモっています。このハモリですが、上のパートをジョンが歌ってるように思います。ポールによると、この部分のメロディはElton Hayesの"Whistle My Love"って曲からパクったそうですが、言われなければ誰も分からないと思います(笑)。ちなみにこの"Whistle My Love"は、ディズニー映画の「ロビンフッド」の挿入歌だそうで、熱心な音楽ファンとして色んなところにアンテナを張り巡らせていたんだなってことが分かります。

長いビートルズ・ファン歴で、この曲にスポットライトが当たった記憶が全くありませんが、個人的にはお気に入りの曲です。ライブ映えしそうな曲にもかかわらず、楽器編成がビートルズの4人だけでライブで再現が困難な点が残念でなりません。この楽曲に関してはギターが大して戦力になっていないと思うので、ジョージにベースを弾いてもらって、ポールがピアノ、ジョンはイントロと間奏のハーモニカって編成にすればライブでできるかな(笑)。スタジアムではなくライブハウスでこそ映える曲だと思います。

Elton Hayesの"Whistle My Love"