オリジナルはスモーキー・ロビンソン&ザ・ミラクルズが1962年11月にリリースして、ビルボートのシングルチャートのトップ10に入るヒットとなりました。かなりオリジナルに忠実に演奏しており、オリジナルとの違いと言えば、サックスが入ってないのとフルエンディングにしたくらいでしょうか。
1963年7月18日、アルバム『With The Beatles』のレコーディングの最初に演奏されました。編集テイクと合わせて11テイクで、同日中にレコーディングは完了しています。先ほどオリジナルに忠実な演奏と書きましたが、仕上がりは全く違っていて、ビートルズのバージョンの方がサウンドがハードでロックバンドのテイストが強いです。これがビートルズの意図したところかは分かりませんが。
ジョージはカントリー・ジェントルマンでコード弾きを中心に要所でリフを弾き、ジョンはJ-160Eをアンプに繋いでると思いますが、こちらの方のギターはあまり聴こえてきません。ポールのベースは、オリジナルのフレーズをあまり意識してないような感じで、コーラス・パートが多い割には手数も結構多いです。楽曲に相反してリンゴのドラムは結構ハードで、ビートルズのバージョンの方がロック色が強いのは、このリンゴのドラムのせいだと思います。
メインのヴォーカルはジョンとジョージがハモる公式録音曲唯一の組み合わせなんですけど、単にスモーキー好きの2人が分け合っただけで音楽的な意図はないと思われます(笑)。繊細なスモーキーのヴォーカルに対して、野太く切羽詰まったようなジョンのヴォーカルではテイストが全く異なりますが、相変わらずカバー曲でもオリジナルであるかのように歌うジョンのヴォーカルは非常に良いと思います。一方、ジョージの方はあまり持ち味が出てるとは言えないですが、そもそもオリジナルがスモーキーのパートをじっくり聴かせる曲なので、縁の下の力持ちに徹したと言うことでしょう。
オリジナルの完成度が高いので、オリジナルを格段にグレードアップさせるビートルズのカバーならではのマジックはあまり感じられませんが、オリジナルに負けないくらいのビートルズの魅力に溢れた素晴らしい演奏だと思います。
Smokey Robinson & The Miracles