本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

Long Tall Sally

オリジナルはリトル・リチャードが1956年に発表し、ビルボード誌のR&Bチャートで1位を獲得しています。

 素朴な疑問として、音楽ジャンル別チャート(R&Bチャート)の1位っていうのは、アメリカでの認知度はどんなもんだったんでしょうか。リトル・リチャードはポールが強く影響を受けたヴォーカリストの1人ですが、ビートルズ活動中にカバーしてリリースされたものは「Long Tall Sally」1曲だけです。

オリジナルと比較すると、サックスのパートが無いのに加えて、間奏のパートが2回に分断されている違いがあります。ライブでは1回目の間奏をジョン、2回目の間奏をジョージがギター・ソロを弾いているのですが、レコードでも同じなのか色々悩ましいです。ステレオミックスで聴くと、ジョンとジョージのギターは左右のチャンネルに分かれているのですが、1回目と2回目のギターソロは共に左チャンネルから聴こえます。となると、両方とも同じギターと考えるのが自然ですが、2回目のギターソロはカントリー・ジェントルマンの音だし、1回目のギターソロの単音のフレーズはリッケンっぽい音に聴こえるので、同じギターではないように思います。1回目をジョンと仮定した場合、ジョンのギターはステレオでは右から聴こえるのですが、ソロの時だけ左にパンニングされていることになり、それをすることの意味がよく分かりません。とは言うものの、ライブの時と同じように1回目はジョン、2回目はジョージが弾いていると思っています。2人ともらしさ満点のプレーですが、とりわけジョージのソロは非常に完成度が高いのではないでしょうか。

ギターに負けず劣らずリンゴのドラムは絶好調で、特に楽曲後半の3連のリズムは圧巻です。ところでこの曲のステレオミックスを聴くと分かりやすいですが、リンゴのドラムは左右のチャンネルから聴こえており、要はオーバーダビングされています。そこでふと疑問が沸き上がります。この曲が録音されたのは1964年3月1日。アルバム『A Hard Day's Night』のレコーディングの合間、「I'm Happy Just To Dance With You」の次に録音され、たった1テイクで終了したとされています。レコーディングにはビートルズの4人に加え、ピアノでジョージ・マーティンが参加しています。ビートルズの4人については、デビュー前から数多く演奏したであろうことから1発OKになったのも不思議ではありません。しかしながらジョージ・マーティンがいくらピアノの達人とは言え、何回かリハーサルしたにせよ1発でOK出すのは至難の業だと思います。ここからは完全に妄想で書きますが、テイク1はビートルズの4人だけで演奏して4トラック中3トラックを使用、空いてる1トラックに後からジョージ・マーティンがピアノをOKテイクになるまで録音し、同時にリンゴもドラムを演奏していたのではないかと思っています。

そして何より圧巻なのがポールのヴォーカルです。「Money」の時のジョンと同様、他のメンバーの好パフォーマンスが霞むくらい、凄まじいヴォーカルを聴かせてくれます。オリジナルのリトル・リチャードのヴォーカルは大人の余裕を感じさせますが、ポールの方は駆け引き無しのフル・パワーのヴォーカルを聴かせてくれます。オリジナルに忠実に歌っているかと思いきや、意外と「俺は俺」って感じのヴォーカルですね(笑)。彼らのオリジナル曲ではありませんが、演奏とヴォーカルともに紛れもないビートルズサウンドで、コピーとカバーの違いはこういうところだと思います。

こっちはリトル・リチャードのバージョン