本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

Slow Down

オリジナルはラリー・ウイリアムズが1958年に発表したシングルのB面曲で、A面は「Dizzy,Miss Lizzy」でした。ちなみに「Dizzy,Miss Lizzy」のタイトルですけど、オリジナルはDizzyとMissの間にカンマが入りますが、ビートルズのカバーではカンマはありません。ラリー・ウィリアムズの「Slow Down」に話を戻すと、サックスとピアノがフィーチャーされた賑やかなダンス・ミュージックって趣きです。ビートルズのバージョンはサックスこそ入っていませんがオリジナルに忠実に演奏しています。ただし、キーを下げて演奏していますが。この曲がレコーディングされたのは1964年6月1日、アルバム『A Hard Day's Night』のB面収録曲のレコーディングの初日でした。オーバーダビング含めて6テイクでレコーディングは終了、後日ジョージ・マーティンのピアノが追加されています。

 この曲の最大の聴きどころは、ジョンの俺様っぷりでしょう。俺様プレーその1が、ガムシャラにかき鳴らされたリッケンバッカー325のコードストローク。リッケンの音の特性とプレーがマッチした名演と言えるでしょう。俺様プレーその2が間奏のリードギター。コードストロークと同じくリッケンバッカー325をオーバーダビングしたものですが、単音で演奏するとどうしてもリッケン特有のサスティンの短さが悪い意味で気になってしまいます。ジョン自身のプレーも、間奏の後半になると符割りがいい加減になって、らしさは出てるけどあまり良いとは言えないですね。そして俺様プレーその3が、熱いけど決して暑苦しくないジョンのシャウトに尽きるでしょう。ダブルトラックのヴォーカルは、時折り歌詞やメロディが合ってない箇所があって、意図的なのかは判断に苦しみますが全く問題にはなりません。迫力満点のヴォーカルではありますが、腹八分目って感じの歌いっぷりが憎いですね。、これが当時まだ23歳の若造だったのかと感嘆するばかりです。オリジナルのキーから下げているのは、ジョンが歌うには高すぎたからだと思いますが、そのおかげで迫力が増して良かったのではないでしょうか。

ジョンに負けじとリンゴも会心のドラムを聴かせてくれています。ブレイク後のなだれ込むようなフィルインも一々カッコいいのですが、一曲通して抜群のノリでメンバーを牽引し、さぞかしジョンも気持ちよく歌えたことでしょう。ジョージのプレーはピアノに隠れて聞こえにくいですが、ピアノと同じフレーズをオクターブユニゾンで弾いています。弾きそこないの多い怪しいプレーで、意図的に小さくミックスしたのではないでしょうか(苦笑)。ジョージの名誉のために言っておくと、BBCライブでこの曲を演奏した時は、延々繰り返されるリフとギターソロ両方で大活躍していました。ポールはジョージと同じフレーズを楽曲ファーストに徹して弾いていますが、本人的にはあまり楽しくなかったのでは(笑)。

前述の通り、後日ジョージ・マーティンがピアノをオーバーダビングしているのですが、1人だけ間違ってブレイクし慌ててプレーを再開したら本来のブレイク箇所ではみ出したりして、演奏に集中できない事情もあったのかと思ってしまいます。オーバーダビングだから録り直せば良いのに、何でこれをOKにしちゃったんでしょうね。

ラリー・ウイリアムズのバージョン