本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

Things We Said Today

レコードではB面の3曲目に収録されており、映画『A Hard Day's Night』には使用されていない曲です。にもかかわらず、シングル「A Hard Day's Night」のB面曲としてリリースされています。当時のコンサートのセッティングリストにも入っていることから、この曲に対するメンバーの評価の高さが窺われます。このアルバムは13曲中10曲をジョンが作曲しており、ビートルズの全作品で最もジョン色の濃いアルバムだと思いますが、ポール作の3曲も佳曲揃いでポールも力を付けてきたことが分かります。

 1964年6月2日にレコーディングされたのですが、オーバーダビングも含めてわずか3テイクで終了しています。事前に充分なリハーサルが出来ていたのでしょうか。楽器演奏は余計なことは一切せず、歌を聴かせることを第一と考えたようなアレンジになっています。アコースティック・ギターをジョン、エレキ・ギターをジョージが弾いていると思われます。イントロや曲の合間に聴こえる「ジャガジャン」ってストロークは、オーバーダビングではなくミキサーの操作で強調したものです。ジョージは12弦ギターではなく、カントリージェントルマンを弾いていると思われます。トーンを絞った甘い音で優しくコードを鳴らしています。ミドルでマイナからメジャーに転調すると、一転して力強いストロークに変わってメリハリを付けています。リンゴは全くオカズがはいらないプレーです。スネアは2拍4拍の同じパターンを延々と繰り返していますが、ミドルでメジャーキーに転調するとハイハットをオープン、バスドラを多く踏んでメリハリをつけています。ベースはある程度パターン化されているようですが、例によって同じフレーズの繰り返しではなく、ちょっとずつ変化をつけています。意識して変化をつけたと言うより、元々きっちりとフレーズを固めていたのではないと思っています。ミドルではピアノも演奏しているのですが、ステレオミックスではそのまま使われているものの、モノラルミックスではカットされています。が、レコーディング時に別のマイクが音を拾っていたと思われ、ステレオミックスほどではありませんが、ピアノの音も聴こえてきます。

ポールのヴォーカルは最初シングルトラックで始まるのですが、1コーラス目の"Things we said today~"のところからダブルトラックになります。ポールは腹八分目くらいの力の入れ具合で歌っていますが、やや不安定な感じに聴こえます。要所要所でジョンが下のパートをハモっており、無くてもいいんじゃないかってくらい短いフレーズなんですが、無ければ楽曲の仕上がりは全然違ったでしょう。

ビートルズ解散後のライブで演奏していることから、ポールにとって思い入れの強い曲なんだろうと思います。過剰さを排除したクールな味わいのメロディラインは、ポールとしても快心の一曲ではないでしょうか。