本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

I Feel Fine

ビートルズの8枚目のシングルで1964年12月に発売されました。レコーディングは1964年10月18日に行われ、9テイクで完成しています。冒頭のフィードバックについて、赤盤のライナーノーツだったかに(違ったかも)、「電気系統のトラブルがそのまま収録された」的なことが書かれていたのを見た記憶がありますが、そんなはずはありません(苦笑)。第1テイクからこの音は収録されているのと、ベースも同時に音が鳴っていることから明らかなように、ビートルズは意図的にフィードバックを生み出して曲の一部として収録しています。ただし、あの独特のサウンドはJ-160EとVOXのアンプとの組み合わせでないと再現できないらしいのですが、どちらも所持していないのでその辺はよく分かりません。

この曲のギターリフはBobby Parkerの「Watch Your Step」から着想を得たことを、ジョンやジョージが発言しています。「Watch Your Step」は1961年に発表されビルボード誌のHot100で51位まで上がっています。Wikipediaによると、この曲はMantecaの「Dizzy Gillespie」(←正直、ミュージシャンも曲も知らん)やRay Charlesの「What'd I Say」の影響を受けているそうで、「I Feel Fine」はR&B界の伝統を後世に伝えるべく出来上がった曲と言えそうです(笑)。このギターリフはバレーコード(1本の指で複数弦を押さえるコード。いわゆる初心者の壁)を押さえながら弾く独特なフレーズで、「Watch Your Step」と似ているようで左手の運指は全然違います。10フレット目のハイコードのDからスタートするので、アコースティックギターで演奏するには少々困難に思われますが、見た目はアコースティックでも実質的にはエレキギターのJ-160Eならではのフレーズと言えるでしょう。ところで、ライブ演奏時はリッケンもしくはカジノで代用しているのですが、いつ頃のツアーか分からないけどJ-160Eを使用している映像もYouTubeで発見しました。この時のセットリストには「I'm A Loser」も含まれていたのではと思います。

ジョージのギターはイントロの最初3小節は休みで、4小節目からジョンとユニゾンで弾いた後は、入れ替わるように単音のリフを担当します。歌中ジョンはコードカッティングにまわりますが、時折り単音のリフも織り交ぜてジョージのギターとユニゾンになるところは、メリハリが効いて効果的だなと思います。プロモーション・フィルムでは、ジョージはギブソンのES-345を抱えています。ES-345はこの頃に入手したようで、この曲以外にも「Ticket To Ride」や「Day Tripper」のプロモーションフィルムでも登場しています。1965年12月のUKツアーやアルバム『Revolver』のレコーディングでも使用されたようですが、ビートルズ活動期間においてメインギターとしては使われていないと思われます。レコードを聴く限り、硬くて深みに欠けるサウンドから、レコーディングではES-345ではなくグレッチ・テネシアンを使っているのではないでしょうか。

ギターリフ以上に「Watch Your Step」の影響を受けているのがリンゴのドラムです。このプレーはジョンのリクエストに基づくものだと思いますが、ラテン風ではあるけどそのまんまではない独特のものです。スネアドラムのリムショットの響きと、タムとシンバルの軽快なコンビネーションは、ジョンとジョージのギターに負けないくらい存在感があります。ポールのベースは簡単なフレーズに聴こえますが、ポール得意の引っ掛けのフレーズが決まらないと楽曲のノリが全くの別物になる重要なパートです。

ジョンのヴォーカルは、アルバム『A Hard Day's Night』までとは明らかにスタイルが異なります。喉の気道を狭めて声量を抑えたハスキーなヴォーカルで、「No Reply」や「You've Got To Hide Your Love Away」でも同じようなスタイルのヴォーカルが聴けます。ちなみに、レコーディングは「No Reply」の方がこの曲より半月ほど早いです。楽曲のタイトル部分とサビは、ポールとジョージを加わり3声のハーモニーを聴くことができます。ハーモニー自体は凝ったものではありませんが、タイム感バッチリに3人の声が響きあい、3人ともダブルトラックなのも相まって、音の壁が目の前に現れたような錯覚に陥ります。

この前のシングル「A Hard Day's Night」が初期のビートルズの総決算的なサウンドだったので、普通に考えたら次のシングルはむちゃくちゃ難しいと思うのですが、音楽的にも営業的にも大成功の作品となりました。じっくり楽曲を練り上げる時間なんかなかっただろうに、色々と盛りだくさんでサービスし過ぎにも程がある(笑)。歌良し!演奏良し!楽曲良し!アレンジ良し!、と非の打ちどころのない一曲で、世界中のビートルズ(のコピーバンド)にとって必須科目と言うべき作品ではないでしょうか。

Bobby Parker「Watch Your Step」

Manteca「Dizzy Gillespie

Ray Charles 「What'd I Say」

ライブでJ-160Eを演奏するジョン