本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

Baby's In Black

アルバム『A Hard Day's Night』が発売されてから約一か月後、1964年8月11日に次のアルバムのためのレコーディングが開始され、最初に録音されたのがこの曲でした。この曲のモチーフになっているのが、アルバム『With The Beatles』のアルバムジャケットでお馴染み、ハーフシャドウと呼ばれる撮影技法を発案したアストリッド・キルヒャーと言われています。アストリッドはビートルズの元メンバー、スチュアート・サトクリフと恋仲であったことでも知られています。この曲は、スチュアートの若すぎる死を乗り越えることができなかったアストリッドのことを歌ったものと言われています。楽曲を発表してから1966年の最後のアメリカ公演までコンサートのセットリストに名を連ねており、ジョンとポールのお気に入りの曲だったようです。ビートルズには珍しい6/8拍子の楽曲です。『A Hard Day's Night』収録の「I'll Be Back」の初期テイクが6/8拍子だったのは、この曲のような仕上がりをジョンは思い描いていたのかもしれません。

ジョージのギターから楽曲はスタートします。ビートルズの楽曲には珍しくトレモロアームを駆使した演奏です。ミドルのギターソロのため、トレモロアームを駆使したフレーズを時間をかけてレコーディングしたようですが、結局ボツになっています(OKテイクでもトレモロアームは使っていますが...)。いわゆるバイオリン奏法的なサウンドトレモロアームで実現しようとしていたようですが、下の写真のようにジョンがギターのヴォリューム操作するって方法で解決しています。非常にローテクな方法ですけど、コロンブスの卵と同じでそれを思いついたビートルズは凄いんだと思います。

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楽曲の前半ではダブルトラックになっていたリードギターが、ミドルのギターソロ以降はシングルトラックになっています。何かをオーバーダビングした時に、ダブルトラック分のギターの音を消しちゃったのかもしれませんね。エンディングのリードギターは、思い出したかのようにダブルトラックになっています。ジョージはリズムギターも演奏しています。ジョンが演奏するJ-160Eと2本のギターで細かくリズムを刻んでおり、若干うるさくも感じます。リンゴのドラムとポールのベースが、楽曲全体が性急になりすぎないようにどっしり感を担当しています。リンゴには珍しく、キックが多めですね。

楽曲の最大の聴きどころは、ジョンとポールのヴォーカルでしょう。楽曲全編2人がハモリ続ける唯一の曲ではないでしょうか。2人のハーモニーは楽曲を通してつかず離れずの具合が絶妙で、どちらのパートも主旋律という彼らのコメントに嘘偽りはありません。特にサビの「Oh how long will it take,Till she sees the mistake she has made?」の2人のヴォーカルはたまりません。さぞかし歌っていて楽しかったであろうこの曲が、最後のアメリカ公演まで演奏され続けた理由も分かる気がします。