本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

Wait

曲を作りながら自転車操業状態が続いた『Rubber Soul』のレコーディングの最終日、1965年11月11日の時点でアルバム収録用の曲が3曲不足していました。ポールが「You Won't See Me」、ジョンが「Girl」を用意してきたものの、まだ1曲足りない。そこで、アルバム『Help!』用にレコーディングしたものの収録を見送られた「Wait」を引っ張り出すことにしました。『Rubber Soul』のレコーディング期間中に、インスト曲の「12-Bar Original(仮称)」もレコーディングしているのですが、この時点でメンバー的には収録する価値なしと判断されていたのですね(汗)。

この曲は映画『Help!』撮影のためバハマに滞在していたときに、長らく会えなかったジェーン・アッシャーを想い、ポールが作った曲だそうです。歌詞の内容はモロそのまんまですが、それより楽曲にバハマ感が皆無なのが凄い(苦笑)。アルバム『Help!』に収録されなかったのは、バハマ感はともかく曲調が他の収録曲と違い過ぎる点も、理由ではないでしょうか。ジョンのヴォーカルからスタートするので、てっきりジョン主導で出来た曲かと思ってました。元々のレコーディングは1965年6月17日に行われ、唯一完奏した4テイク目がOKテイクとなっています。11月11日のレコーディングは、6月17日の4テイク目にギター、コーラス、パーカッション類をオーバーダビングして完成しています。

前述の通りアルバム『Help!』収録用にレコーディングした曲なので、『Rubber Soul』収録曲の中ではサウンド的に違和感を覚えます。ジョンがリッケンバッカー325、ポールがヘフナーを演奏しているのが、その主たる要因かと思われます。ヴォリューム・ペダルを使ったバイオリン奏法はジョージの演奏でしょう。ステレオ・ミックスの左から聞えるギター2本が6月17日の4テイク目の演奏で、右の方が11月11日にオーバーダビングしたものと思われます。ジョージは6月と11月ともに、ストラトキャスターを演奏しているようです。リンゴはタムタム連打の直前、ハイハットオープンのフレーズが実にキマってます。サビはシンバルの連打で、この辺は『Help!』っぽさを感じます。オーバーダビングのマラカスとタンバリンの音が大き目なのが気になりますが、曲中のメリハリをコントロールしている重要なパートだと思います。

ジョンとポールのヴォーカルは、"It's been a long time~"のパートのみシングルトラックで、それ以外はダブルトラックになっています。サビの"Wait,till I come back to your side~"のパートは一番の聞かせどころで、ポールが作った感が一番強く出てますよね。楽曲の終盤で3声でハモるパートがありますが、11月11日のレコーディングで一番上のパートをダビングしたと思われます。一番上のパートは、声を聞く限りポールだと思います。シングルトラックとダブルトラックの使い分けや、ジョンとポールのデュエットに最後もう一音被せたりして、効果的にヴォーカルにメリハリをつけていると思います。

アルバム『Help!』への収録は見送られましたが、『Rubber Soul』収録用に引っ張り出されて効果的なオーバーダビングされたことで、楽曲のクオリティが上がって結果的には良かったんじゃないですかねぇ。自分はこの曲が大好きで、『Rubber Soul』を象徴するような曲だと思っていたので、『Help!』のアウトテイクと知った時の衝撃は大変なものでした(苦笑)。何をもって『Rubber Soul』を象徴するような曲だと思ったのか我ながら謎ですが、「理屈抜きにこの曲が好き」意外の理由が思い当たりません(爆)。この後ジョンとポールがメイン・ヴォーカルを分け合う曲が激減するので、『Rubber Soul』を象徴する曲と言うより、初期ビートルズの終わりを象徴する曲と言う方が近いのかなぁと思います。

In My Life

当初のアイデアは、メンローヴ・アヴェニューの家(ジョンが幼少期を過ごした、ジョージ叔父さんとミミ叔母さんの家)からバス通学していた頃を思い出して、バスから眺めた光景を歌詞にする予定だったそうです。Penny Laneなどの地名を歌詞に並べていましたが、この歌詞はボツにしています。歌詞を先に書き上げ後からメロディをつけたそうで、ジョンによるとメロディの一部をポールが手助けしたとのことです。一方ポールはメロデイ全部を作ったと主張しており、2人の記憶が全く食い違っています。メロデイの黄昏れた感じから、ポールが手助けしたにせよ、ジョン主導で作ったのではと個人的には思っています。

レコーディングは1965年10月18日「If I Needed Someone」に続いて行われました。リハーサルの後、ベーシックトラックを3テイク録音し、3テイク目がベストとなります。この時点では、間奏をどうするか決まっていませんでした。10月22日の午前中に間奏のレコーディングが行われましたが、ビートルズのメンバーは立ち会ってなかったようです。この時点で決まっていたのが、ジョージ・マーティンが何か鍵盤楽器を演奏するということだけ。ジョージ・マーティンはまずハモンド・オルガンを演奏し、次いでピアノを演奏します。ジョージ・マーティンバロック風のフレーズを思いつきますが、彼が演奏するには難易度が高いものでした。そこで、テープ速度を半分に落とすことを思いつき、演奏面の問題を解決しました。テープ速度を元に戻すと、ピアノの音のピッチが上がりハープシコードっぽい音色になって、フレーズとサウンドともにジョージ・マーティンが意図した通りのバロック風のソロに仕上がりました。ジョンもソロの出来に満足し、間奏に採用されます。

楽器演奏はギター、ベース、ドラムの3ピース構成が基本で、前述のピアノやリード・ギターが時折り入るのみです。ギターはどちらもフェンダーストラトキャスターと思われます。そのギター2本で楽曲はスタートします。多分ジョージが演奏しているリード・ギターは、フレーズが秀逸で楽曲全体の印象を決定づける重要なパートです。ジョンは右手の腹で弦をミュートしながらコードを鳴らしています。絶妙にミュートされたまろやかなギターサウンドは、歌詞に込められたジョンの想いを体現していると言ったら褒め過ぎでしょうか。フィーリング一発の演奏かと思いきや、しっかりとパターン化されており、あらかじめフレーズを作りこんでレコーディングに臨んでいるようです。リンゴのドラムは「Anna(Go To Him)」や「All I've Go To Do」と同系統のスタイルで、リム・ショット中心のタイトな演奏です。ジョンの曲では比較的おとなしめなポールのベースですが、意外と動きの多いフレーズを演奏しています。例によって同じフレーズを繰り返しませんが、メロディアスと言える程でもなく、基本的には縁の下の力持ちに徹しています。バッキングの大半は3つの楽器しか鳴ってないのに物足りなさはなく、アンサンブルの素晴らしさを感じずにはいられません。

メインのヴォーカルはジョンですが、ジョンのソロパートは意外と少なく、ハモリやコーラスでポールの出番が多いです。このことからも、曲作りにポールが少なからず貢献をしていることが窺われます。ジョンは思い入れたっぷりに歌うわけではなく、軽く鼻に抜けるような脱力系の声で淡々と歌っています。ヴォーカルとコーラスともにダブルトラックであるのに加え、息ピッタリの3人のハーモニーはまるで音のカタマリのようで、楽器構成がシンプルなのはこのハーモニーを聴かせるためだったのではと思えてきます。間奏のピアノ・ソロが秀逸すぎて、評価がそちらに偏ってますが、楽曲のトータル・アレンジの素晴らしさが光ります。

以前はピアノの間奏のない「In My Life」は「In My Life」にあらずと思っていましたが、エド・シーランの素晴らしすぎるギターの弾き語りを聴いて、その考えは改めました(笑)。元歌の良さが、あのピアノの間奏を引き出したんですよね。世界中の数多くのビートルズ・ファンが、この曲を自分の人生のBGMとして鳴らしていることと思いますが、たわいない人生の思い出の1ページをキラリと光らせてくれる、フトコロの深い名曲だと思います。

素晴らしすぎるエド・シーランのカバー

COUNT ME IN 魂のリズム

映画『COUNT ME IN 魂のリズム』を観てきました。プロのロックドラマーが、ドラムの素晴らしさを語りまくる約80分。自分に馴染み深いところでは、ロジャー・テイラー、スチュワート・コープランド、トッパー・ヒードン、ジム・ケルトナーイアン・ペイス、ニック・メイスン、エイブラ・ボリアルJR。ロジャー・テイラーがすっかりおじいさんだったのと、ジム・ケルトナートム・クルーズのような風貌だったのには驚いた。ロジャー・テイラーはともかく、ジム・ケルトナーは直近の映像なのかは謎だけど。スチュワート・コープランドがあんなに気さくに話す人だと思ってなかったし、トッパー・ヒードンはカッコイイ年のとりかたをしていたな。リンゴ、チャーリー・ワッツキース・ムーンジョン・ボーナムは映像シーンだけの登場だったけど(リンゴ以外は他界されているので当然ですが)、それぞれ凄かったな。

映画中で特に印象的だった3点。

 ①彼らが影響を受けたドラマーは、必ずしもセオリーに忠実に演奏していないこと

 ②BPMが開始時点より速くなっていることが、悪いドラミングではないこと

 ③演奏中に間違えたとしても、それより大事なことがあること

それぞれ別のドラマーが語っていたことですが、本質的に同じことを言っていると思いました。

プロのミュージシャンは、プロの音楽好きであることを改めて思い知りました。これは音楽に限らず、スポーツとか何事にも通ずることだけど。楽しい映画でした。

 

I'm Looking Through You

『Rubber Soul』収録曲で一番レコーディングが難航した曲かもしれません。レコーディングを開始したのが1965年10月24日。この日のレコーディングはこの曲だけに費やし、リハーサルの後ベーシックトラックのレコーディングが1テイクで終了。それにオーバーダビングして一旦完成しますが結局ボツになります。この時のバージョンは後に「Anthology」に収録されて日の目を見ます。キーが半音低くてテンポが遅い、クラシック・ギターを使用している、など正式リリース・バージョンとの違いはありますが、最も大きな違いはミドルエイトがないことでしょう。要は楽曲がまだ未完成だったのです。その後、1965年11月6日のリメイクで正式リリース版に近づきますが、テンポが速くなり過ぎたということで1965年11月10日に再リメイク。『Rubber Soul』のレコーディング最終日の1965年11月11日に、ヴォーカルをオーバーダビングしてようやく完成します。レコーディングが難航したというより、楽曲を仕上げるのに時間がかかったって感じですかね。

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「フレディマーキュリー The Show Must Go On」

SNSで拾った情報によると、Amazonプライムで配信していたコンテンツを編集したものってことなんですが、その真偽はさておき、イギリスあたりのテレビ番組を劇場公開したような印象を受けました。クイーンの周辺で働いていた人達がフレディの人物像を語るって構成で、バンドのメンバーの登場も期待したのですが殆ど出てきません。エピソード的にも驚くような情報もなく、途中登場したデビッド・ボウイのカッコ良さが一番印象に残ってます(苦笑)。ミニシアターの自分が座っていた列がビッシリ埋まるくらいの盛況ぶりで、フレディっちゅうかクイーンの人気の高さを思い知りました。

 

Girl

『Rubber Soul』のレコーディング最終日を迎え、あと3曲足りないケツに火がついた状況で、ジョンが持ち込んだのがこの「Girl」でした。この曲が生まれたのは、ジョンの自宅でジョンとポールがアルバム用の曲作りをしていた時でした。ジョン主導でできた曲ですが、歌詞のいくつかはポールのアイデアが活かされているようです。

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What Goes On

ジョンが10代の頃、The Beatlesと名乗る前には楽曲の原型が出来ていたようです。1963年3月の「From Me To You」と「Thank You Girl」のレコーディングが予定より早く終わり、余った時間にレコーディングする曲として候補に挙がったものの、結局「One After 909」がレコーディングされました(結局それは当時未発表)。ネットで見つけた情報によると、1965年10月13日にポールとリンゴがジョンの自宅を訪問し、この曲を引っ張り出して3人がかりでミドルエイトなど改良して、『Rubber Soul』用のリンゴ・ヴォーカル曲としてレコーディングに至ったということです。日付が正確かはともかく、お蔵入りになった曲を引っ張り出したのは事実でしょう。

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