本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

You're Going To Lose That Girl

映画『Help!』挿入歌の中で非常に人気の高い曲です...と勝手に思ってますが、実際のところどうなんでしょう。自分がこの曲大好きなんで、きっとみんなもそうに違いない!と思い込んでます(苦笑)。映画ではレコーディング・スタジオでの演奏シーンに使われた曲で、とても印象深いシーンです。実際のレコーディングは1965年2月19日に行われ、この日のうちにレコーディングは完了しています。

歌とコーラスに重きを置いたシンプルなアレンジです。楽曲全編で鳴っているエレキギターのコードストロークは、これまでのビートルズの作品では聞き覚えのないサウンドです。ジョージ・マーティンが残したレコーディング記録によると、ジョンがグレッチのギターを演奏しているようです。過去のレコーディングでジョンがグレッチのギターを演奏した記録がないため、この翌年のシングル「Paperback Writer」でジョンが演奏したグレッチ6120をこの頃に入手していたと思われます。間奏のリードギターはジョージと思われますが、こっちも聞き覚えのないサウンドです。恐らくフェンダーストラトキャスターではないでしょうか。ベーシックトラックでもリードギターを演奏していたようですが、後からオーバーダビングしたものが採用されています。

ベースはフレーズ的には難しいものではありませんが、ベーシストとしてのポールの上手さがよく表れています。長い音も短い音も音符の長さをキッチリ演奏するのがポールの特徴で、当たり前のようでもこれを続けるのは至難のワザです。リンゴはシンプルな8ビートのリズムを、全くオカズなしに演奏しています。ポールはピアノを、リンゴはボンゴをオーバーダビングしています。ピアノはオフ気味で聞き取りにくいのですが、中低音の響きは確実に戦力になってますし、ボンゴの小気味よいリズムが楽曲を勢いづけています。

ここまで紹介してきたアルバム『Help!』収録曲は、コーラスのアレンジに従来の作風からの変化が見られましたが、この曲では従来通りのコーラスに近いアレンジです。モータウンのガールズポップ辺りの影響を強く感じる、「Tell Me Why」の続編といったところでしょうか。ジョンのヴォーカルの後をコーラスが追い、転調のパートではジョンのヴォーカルに重ねて分厚いハーモニーを聞かせてくれます。ジョンは堂々とそして実に気持ち良さそうに歌っています。とりわけファルセットの美しさには惚れ惚れとします。楽曲が良ければ余計なアレンジはいっさい不要、3人のヴォーカルとコーラスだけで充分リッチなサウンドに仕上がっています。こんなに良い曲なのにレコーディング後に演奏機会がなかったのは、実に勿体ない話だと思います。