本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

Love You To

『Revolver』収録曲のレコーディングでは、「Tomorrow Never Knows」「Got To Get You Into My Life」に続き3番目に着手されました。アルバムのサウンドを象徴するような楽曲が続いており、このレコーディング順は単なる偶然とは思えません。『Help!』『Rubber Soul』では2曲だったジョージの作品が、今作では3曲も収録されていることも勘案すると、「Taxman」のレコーディングでは悔しい思いもしたけど(苦笑)、作曲家としてメンバーから一定の評価を勝ち取ったと思っていいんじゃないですかね。仮タイトルの"Granny Smith"は、ジェフ・エメリックの好きな林檎の品種が由来です。

ベーシック・トラックは、ジョージのヴォーカルとアコースティック・ギター、ポールのハーモニーという編成でレコーディングして、第3テイクの空きトラックにジョージがシタールを追加したようです。食事を挟んで再開したレコーディング・セッションでは、ジョージがシタール、ポールがタンブーラ、ゲスト・ミュージシャンのアニル・バグワットがタブラを演奏して、インド風のアレンジが仕上がっていきます。パトリシア・アンガディなる人物の紹介で「Love You To」のレコーディングに参加したアニル・バグワットは、当時大学生だったそうです。パトリシア・アンガディはエイジアン・ミュージック・サークル(以下AMC)の設立者で、彼女の紹介でジョージはラヴィ・シャンカール(ジョージのシタールの師匠)と出会います。「Love You To」のレコーディングの約半年前、初めてシタールを使った「Norwegian Wood」のレコーディング中、シタールの弦が切れたそうです。そこで切れた弦の修復に呼び寄せたのがAMCで(AMCを呼ぶまでの経緯には2説あるのですが、長くなるので割愛)、この出来事がきっかけでジョージはAMCの常連となります。パトリシアは画家でもあって、ジョージとパティの肖像画を描いている画像も残っています。

この曲のシタールの演奏について、ジョージ以外にも演奏者がいたという説もあるそうですが、アニル・バグワットはこの説を否定しています。また、Special Editionに収録されたリハーサル・テイクを聞く限り、ジョージがシタールを演奏しているのは間違いなさそうです。「Norwegian Wood」の演奏と比較すると、格段に上達したのが分かります。『Rubber Soul』から『Revolver』までの期間、ジョージはギターよりシタールの方を熱心に練習していたのではないでしょうか。

アニル・バグワットが演奏したタブラは、インドの打楽器です。打楽器でありながら音程を上下させることができます。ボンゴのように2つで1セットですが、左右の太鼓の大きさと材質が異なります。アニル・バグワットはアドリブで演奏したいと申し出て、ラヴィ・シャンカール風の16ビートで演奏することを条件に、ジョージは了承したそうです。今我々が聴いているアニル・バグワットの演奏が、ラヴィ・シャンカール風の16ビートなんですよね、多分(笑)。ポールが演奏したタンブーラは、いわゆるルート音を延々と鳴らし続ける役割の楽器です。音程が上下しないので、インド楽器に慣れていないはずのポールでも演奏しやすかったのではないでしょうか。インド楽器以外では、リンゴがタンバリン、ジョージはアコースティック・ギターとエレキ・ギターを演奏しています。エレキ・ギターの歪んだ音は、「Think For Yourself」で使用したトーン・ベンダーによるものです。

起伏の少ないメロディのせいでもあると思いますが、ジョージのヴォーカルには、1年前の「I Need You」や「You Like Me Too Much」の可愛らしさは全くありません。あらゆる煩悩を捨て去ったようなヴォーカルではありますが、歌ってる内容は結構エロいです(苦笑)。楽曲全編でヴォーカルはADT処理をされているようです。ポールのハーモニーもレコーディングされたのですが、結局ミックスされませんでした。この曲のハーモニーのように、ビートルズはレコーディングしても最終的に使わないことがよくありますが、色々とアイデアを詰め込むだけではなく、不要と思ったら躊躇なくカットする姿勢が素晴らしいと思います。

この曲と同じようにシタールを使った「Norwegian Wood」と比較すると、ジョージの演奏技術が格段に上がったのと、シタールなどインド楽器がサウンドの核になってる点が異なります。本場のインド音楽とは全然違うと思うのですが、ビートルズインド音楽を極めることに価値があるとは思えません。この曲はインド楽器がサウンドの核とは言え、彼らが演奏しているのはロック・ミュージックであることに意義があると思います。よりインドっぽい「Within You,Without You」や「The Inner Light」より、ビートルズの曲としてはこっちの方が断然上だと思うのです。