本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

Ticket To Ride

イギリス南部のワイト島のRydeという町でポールの従兄弟夫婦が経営しているパブに、ポールとジョンが遊びにいった時のチケット(Ticket To Ryde)が「Ticket To Ride」の元ネタという逸話があります。真偽の程は定かではありませんが(汗)。ちなみにワイト島は、後年の「When I'm Sity-Four」の歌詞に登場する島です。

1965年2月15日に始まった映画「Help!」のサウンドトラックのためのレコーディングは、この曲からスタートしました。1月中旬までイギリスツアーやクリスマスショーで多忙な日々を過ごしながら、レコーディングの初日にこれだけの曲を用意していたのは脅威としか言いようがありません。「忙しいから出来ません」ってのは理由にならないことを示されたようで、自分の日頃の行動を反省するしかありません(爆)。

レコーディングの前にリハーサルが行われ、リハーサルの音源を流しながらリズムトラックがレコーディングされたそうです。ジョージはアルペジオ風のギターリフを演奏しています。ローコードのAを分解した難易度低めのリフですが、12弦ギター特有の煌びやかなサウンドが効果的で、これを思いついたジョージはもっと褒められるべきだと思います。同じトラックにジョンのギターが入っているのですが、ジョージの12弦ギターが鳴ってる間は殆ど聴こえません。リズムトラックでは終始コードを鳴らしてるようですが、ジョージ・マーティンの著書「Playback」によるとストラトキャスターを演奏しているようです。リズムトラック完成後、2本のギターがオーバーダビングされています。1本はポールがカジノを演奏したオブリガードです。カジノ特有の丸みを帯びたサウンドチョーキングを多用したフレーズは、当時のジョージの演奏スタイルとは明らかに異なるものです。フレーズ的にはそれほどカッコいいとは思わないんですけどね(苦笑)。もう一本、ルートをギーンギーンと鳴らしているギターが聴こえます。前述のジョージ・マーティン著書によると、これもストラトキャスターでこっちはジョージが演奏しているようです。演奏するには少々退屈なフレーズではありますが、楽曲に重厚感をもたらしている重要なパートだと思います。

リンゴのドラムパターンはポールの発案、とジョンが言ってます。ヴァースではシンバルを叩かず、スネアやタムを力強く打ち鳴らしています。ジョージによると、彼の12弦ギターのリフがこのドラムパターンを誘発したとのことなんですけど、確かに最初の方はジョージのリフとシンクロしています。発案者はポールかもしれないけど、この曲のリンゴのドラムはイイですね。特にヴァースのドラムパターンのタイム感は絶妙ではないでしょうか。ポールのベースは低い音は出てるんですけど、輪郭のハッキリしないサウンドです。リードギターを演奏する代わりにベースの自己主張を控えたのかもしれません。そんな訳ないと思いますが(笑)。

1965年一発目のレコーディングでも、ジョンのヴォーカルは引き続き絶好調。他のメンバーとの違いは、出来たばかりのオリジナル曲でも歌い慣れているかのように上手いこと。ややダルそうに歌うヴァースと声を張り上げるコーラスとの歌い分けが絶妙です。ハモるポールも伸びのある声で、ビートルズらしさ溢れる2人のヴォーカルです。

印象的な12弦ギターのリフから始まって、ブレイク後からテンポアップするエンディングまでアイデアが盛りだくさんの一曲。この曲についてジョンのコメント、ヘヴィメタルのさきがけって評価に最初は理解できませんでしたが、重厚な演奏パートを聴くと説得力が増します。当初、ジョージはこの曲がシングルとして成功するか不安だったそうですが、ジョージの不安をよそに商業的にも成功しました。以前はこの曲のことあまり好きではなかったのですが、最近になって良さが分かったことは出来れば隠しておきたい事実です(汗)。この曲の前のシングル「I Feel Fine」に続いてギターサウンドとアレンジが素晴らしすぎる、ビートルズ快心のシングル曲です。