本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

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アルバムのオープニングにしては渋すぎる曲で、前の3枚のアルバムとは明らかに雰囲気が異なります。愁いを帯びたメロディラインはこれまでの作品にはないもので、ビートルズが次のステップに向けて走り始めたことが伝わってきます。レコーディングは1964年9月30日に行われ、その日のうちに8テイクで完成しています。

この曲の初期テイクは普通の8ビートで演奏されており、「Thank You Girl」や「I'll Get You」を連想するような感じだったのですが、ボサノバ風のリズムにしたところ楽曲の雰囲気がガラっと変わりました。誰の発案でリズムパターンを変更したのか分かりませんが、これを思いついたメンバーもしくはスタッフは天才だなぁって思いますね。もちろん、演奏したリンゴも偉いんですけど。ステレオミックスを聴くと、リンゴのドラムは左右から聴こえてきます。左側がベーシックな演奏で、右側がスネアやシンバルをオーバーダビングしている感じです。

ギターのパートは1つのトラックに詰め込まれてる感じなので音を拾うのが困難ですが、4本くらい聞き取ることができます。テネシアン×2(1つはアクセントをつけるため要所要所でのみ演奏されてるっぽい)のほか、J-160Eとガットギターを弾いているようです。今までガットギターは「Till There Was You」や「And I Love Her」などリード楽器として使われてきたんですけど、J-160Eと同じようにコードを鳴らしています。むしろガットギターの方がサウンド的には戦力になっています。

ベースは低い音は出ているものの輪郭がハッキリしないサウンドで、ピックは使わず指で弾いているような気がします。「I saw the light~」の部分はリンゴのシンバルとピアノと合わせて、シンコペーション感の演出に一役買っています。ピアノはオーバーダビングしたものですが、楽曲全編で弾くのではなく登場回数を絞ったことでより効果的になっています。あと、サビが終わってからエンディングにかけてフィンガースナップが入ってますが、これは注意して聞いてないと気付かないレベルです。サウンド的には戦力になってるとは言い難い(苦笑)。

ジョンのヴォーカルは「I Feel Fine」と同じようなスタイルで(レコーディングはこっちが先)、声の出力を意識的に絞ったややハスキーな歌声です。9月30日のレコーディング順では「Every Little Thing」と「What You're Doing」の後だったそうで、ひょっとしたらレコーディングの疲れで声が出なかったのかもしれません。一方ポールのパートは、かなり高い音域であるにもかかわらず元気溌剌の通常営業。楽曲が一番盛り上がる「I saw the light~(I nearly died~)」のところはジョン以上に美味しいパートと言えますが、野太く高い声を出せるポールの有難みを改めて実感できます。

この曲が収録されたアルバム『Beatles For Sale』のアルバムジャケットは、秋のハイドパークで撮影されたものです。深まる秋を連想させる色合いのアルバムジャケットが、何故かこの曲の雰囲気とシンクロします。冒頭でアルバムのオープニングには渋すぎると評しましたが、このアルバムジャケットのオープニング曲は、この曲以外にあり得ないと思っています。