本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

I'm A Loser

レコーディングは1964年8月14日に行われ、8テイクでその日のうちに終了しています。YouTubeでこの曲の初期テイクを聴くことができますが、イントロとエンディングが違うくらいで、楽曲の構成はほぼ完成版と同じような感じになっています。作曲者のジョンが事前にしっかりと作りこんできたから、アレコレいじる必要がなかったのでしょう。

この曲について、ジョンが12弦ギターを弾いているという情報をよく見かけるのですが、自分には12弦ギターを演奏しているようには聴こえません。1965年に録音された「Help!」や「You've Got To Hide Your Love Away」などでは、フラムス社のフーテナニーと呼ばれる12弦ギターを演奏していますが、そこで聴ける12弦ギターのサウンドと「I'm A Loser」のギターサウンドを聴き比べると全く異なって聴こえます。むしろ、これまで愛用してきたJ-160E特有の金属音が「I'm A Loser」でも聴こえることから、この曲でジョンが演奏しているのはJ-160Eであると勝手に結論づけておきます。

ジョージのギターは「All My Loving」や「I'll Cry Instead」の進化形とでも言うべきもので、これまでの「カントリー風」から「風」の文字を返上したような感じです(何のこっちゃ)。前述の初期テイクではまだフレーズが消化不良気味でしたが、たった数時間のレコーディング時間内にしっかりフレーズを仕上げる点は、もっと評価されるべきじゃないかと思っています。サビで登場する、ポール得意のランニングベースのフレーズとか、リンゴもシャッフルのリズムが冴えわたっており、オーバーダビングの少ないシンプルな楽器編成ながらリッチなサウンドになっています。

楽器演奏に負けず劣らずジョンのヴォーカルも絶好調で、高低の音域の幅の広いメロディを気持ち良さそうに歌っています。この曲のレビューで枕詞のように出てくる「ボブ・ディランからの影響」は、ジョンのインタビュー記事からの引用されたものであって、もしそのインタビュー記事がなければ、この曲のジョンのヴォーカルを聴いてボブ・ディランを連想する人はいないんじゃないかなぁ。なにしろ、ディランと比較するとジョンの方が圧倒的に歌が上手いですからね(笑)。

「Help!」と並んで歌詞がフィーチャーされて、ジョンの内面の変化が云々と書かれている文をよく見かけます。それよりも大事なのは、この曲がポップソングとして圧倒的に優れているという点で、「I Feel Fine」が出来るまでシングル候補だったのも納得の、当時のビートルズの進化を端的に表す楽曲だと思います。