本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

I Don't Want To Spoil The Party

アルバム『Beatles For Sale』を語る時、常套句のようにカントリーミュージックからの影響が登場しますが、アルバムに収録されたオリジナル曲にその影響を強く感じさせる曲はそんなに多くありません。このアルバムのレコーディングでジョージがメインで使用したグレッチ・テネシアンのサウンドとカバー曲の選曲が、カントリーミュージックっぽさを感じさせるのだと思います。そんな中になって「I Don't Want To Spoil The Party」はカントリーミュージックからの影響を感じさせる、数少ないオリジナル曲です。

ジョンはJ-160Eをアコースティックで演奏しています。イントロでは単音とコードを弾き分けて、ジョージのギターと絶妙のコンビネーションを聴かせてくれます。歌中はかなり強いストロークでコードを鳴らしており、J-160E特有の金属音が楽曲全編で聞こえます。ジョージのギターは楽曲全体の印象を決定づける重要なパートです。歌中はオフ気味なのでハッキリ聞こえませんが、コードを単音にばらしての演奏が中心のようです。間奏のギターソロはしっかり作りこんでいて、非常に完成度の高いフレーズだと思います。テネシアン特有の硬くてカラッとしたサウンドとギターのフレーズが絶妙にマッチしていて、楽曲の仕上がりをワンランク上に引き上げていると言っても過言ではないでしょう。間違いなくテネシアンでのベストプレイだと思いますし、これまでのキャリアでも屈指の名演だと思います。リンゴは間奏でのみハイハットをオープンにして叩いてる以外は、オカズの入らないシンプルなプレーに徹しています。あとはサビでタンバリンとバスタムもオーバーダビングしているようです。ベースは芯のない柔らかいサウンドですが、楽曲の雰囲気に合うようポールが配慮したのかもしれません。リンゴと同じくシンプルなプレーに徹していますが、間奏前でジョージのギターとフレーズを合わせています。

ジョンのヴォーカルは鼻から抜ける腹八分目くらいの力加減で、中期以降の脱力系ヴォーカルの先駆けともいえるスタイルです。Aメロでは上下のパートともジョンが歌っています。サビではポールのハーモニーもしっかり入っているので、ポール不在でやむなくジョンが両方歌ったって理由ではなさそうです。恐らく上のパートの方がメインのメロディと思われますが、ジョンでもムリなく出せる音域だったから当然のこととして作曲者のジョンがメインのメロディを歌い、下のパートも通常運用でジョンが歌ったのではないかと思います。サビで登場するポールのハーモニーは「ここぞ」とばかりに元気イッパイで、ジョンの脱力系ヴォーカルとの対比が絶妙です。

Beatles For Sale』は前作と較べるとオリジナル曲の割合こそ減りましたが、良い曲が多いってことはもっと評価されるべきだと思うのです。
「I Don't Want To Spoil The Party」はカントリーミュージックからの影響を感じさせつつも、ビートルズサウンドとしか表現しようのないアルバム屈指の名曲に仕上がりました。この曲のように、雑多な音楽ジャンルの要素を自分達のスタイルに取り入れながら、先人達が到達できなかった音楽的な高みにビートルズは登り詰めます。