ビートルズ解散後のジョンの楽曲には、まず歌詞が出来てメロディは後追いで付け足したんだろうなってものが多いのですが(あくまで個人的な意見です)、その先駆けとも言える曲ではないでしょうか。ひょっとしたらメロディが先に出来ていたかもしれませんが、従前の楽曲よりも歌詞に重きを置いたことは間違いないと思います。歌詞の内容が陰気臭いのでコメディ映画の挿入歌に相応しくないように思うのですが、映画の制作スタッフから意見とか出なかったんでしょうかね。個人的にあんまり好きな曲ではないのですが、YouTubeで検索したら有名ミュージシャンが多くカバーしており、同業者からの人気が高い曲と言えそうです。
レコーディングは1965年2月18日に行われ、9テイクで完成しました。この曲では「Love Me Do」でのアンディ・ホワイト以来、久々に外部のミュージシャンが起用されました。エンディング近くでジョン・スコットがフルートを演奏していますが、レコードにはクレジットされていません(彼だけではなく、ビートルズは基本的に外部ミュージシャンをクレジットしていない)。ジョンは「Help!」でも使用した12弦ギター、フラムス社のフーテナニーを演奏しています。レコーディングはこっちの方が先で、ビートルズがフーテナニーをレコーディングに使用した最初の曲と思われます。12弦ギターならではの奥行きのあるサウンドは、この楽器が曲の雰囲気を作っているといっても過言ではありません。ジョージはJ-160Eでジョンと同じように演奏しているほか、オーバーダビングでフーテナニーを演奏しています。6弦のみを1音下げた変則チューニングをしており、サビの単音のフレーズで6弦Dの音を確認することができます(通常、6弦はE)。
ベースはルート中心のシンプルなプレーに徹しており、あまりハッキリとは聞こえてきません。リンゴはブラシを使って演奏しています。ドラムが控えめな分、パーカッション2つ(タンバリンとマラカス)が非常に効果的なのですが、特にマラカスはエンディング近くてテクニカルなプレーを連発しています。リンゴが演奏しているのではと思うのですが、根拠はありません(苦笑)。
ジョンは喉から絞り出すようなハスキー・ヴォイスで、ボブ・ディラン風の楽曲を意識したような歌い方です。クセ強めのヴォーカルですが、とてもテクニカルでジョンの歌の上手さを改めて感じます。アコースティックな楽器主体のアレンジも、渋くなりすぎずに適度に華があって、ジョンのヴォーカルも相まって非常に完成度の高い曲だと思います。