本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

Anna(Go To Him)

オリジナルはアーサー・アレクサンダーが、1962年9月にシングルとしてリリースして、アメリカのチャート(何のチャート誌かは不明)で最高位が68位と、大したヒットにはなりませんでした。

 本家のリリースから半年も経たないうちにカバーしてアルバムに収録していることに驚きますが、ひょっとしてこんなことで驚いているのは僕だけでしょうか(苦笑)。

 

1963年2月11日のレコーディングでは、19時半から始まるセッションで録音されています。そのセッションの最初に「Hold Me Tight」を13テイクも録ったあげくボツになり、その後に続く怒涛のカバー曲大会の1発目に演奏して、3テイクで完成させています。

 

基本的にオリジナルに忠実な演奏と言えますが、ビートルズならではの味付けが色々と盛り込まれています。まず、楽曲全編で演奏されているメインフレーズは、オリジナルがピアノなのに対しジョージがデュオ・ジェットで演奏しています。弾きにくそうなフレーズなんですけど、これはなかなかの名演と言っても良いのではないでしょうか。また、オリジナルで使われているストリングスのパートを、ビートルズはコーラスで代用しています。この辺りは経済的な事情によるものかもしれませんが、コーラスを入れることで非常にビートルズっぽい仕上がりになっています。ジョージのパートが一瞬怪しいところがありますが、ギターを頑張って演奏しているので大目に見ようじゃありませんか(笑)。

 

そして一番の驚きだったのが、ジョンのヴォーカルです。「オリジナルはオリジナル。俺は俺」って感じでしょうか、歌いまわしが全然違います。まぁ、オリジナルの歌い方がクセが強すぎるので、あえて自分流に歌ったのかもしれません。ジョンのバージョンの方がオリジナルで、アーサーの方がフェイク入れまくってるように聴こえますね(笑)。この日のレコーディングは、ジョンが酷い風邪をひいていたのは有名な話で、確かにこの曲のヴォーカルも掠れ気味で声があまり出ていません。これも味と捉えるかどうかは、人によって分かれるところでしょう。

 

ジョンのギターは、ジョージのギターと被っていて聴き取り難いのですが、恐らくJ-160Eをアンプに通して鳴らしているように聴こえます。リンゴのドラムは、オリジナルに忠実な演奏をしています。このドラムパターンは「All I've Got To Do」や「In My Life」でも聴く事ができます。ポールのベースは縁の下の力持ちに徹してますが、音を伸ばすところと短く切るところ、メリハリつけて楽曲を絞めています。

 

ところで、この曲の歌詞は、彼の妻アンとの結婚生活のトラブルという実話がベースになっているそうです。オリジナルのヴォーカルが、ジョンとは違った物悲しさに溢れているのは、そのせいかもしれません(涙)。

こっちがオリジナル。