本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

Not A Second Time

このブログを始めてから何度か書いていることですが、ビートルズらしさとは何かと考えると、ジョン、ポール、ジョージの3声のヴォーカルだと思っています。

 勿論、ビートルズらしさの構成要素はそれだけではありませんが、とりわけビートルズ初期においては3声のヴォーカルを最大のセールスポイントとして押し出していたように思います。そんな中にあって、ジョン作のこの曲はジョンのヴォーカル・パートのみで、ポールとジョージのハモりとかコーラスが無いって点で異色の曲だと思います。また、この曲はキーGメジャーのダイアトニックコードのみで構成されています。過去に紹介した彼らのオリジナル曲には、必ずと言ってよいほどノンダイアトニックコードが使われ、それもビートルズらしさの構成要素の1つだったので、この点でも異色の曲と言えます。

ジョンとジョージともにJ-160Eを弾いていると思います。生でコードを鳴らしている方がジョン、アンプに通してカッティングしている方がジョージではないでしょうか。ステレオ盤で聴くと、左チャンネルから聴こえる2本のギターとは別に、右チャンネルの方からもジョンのヴォーカルの後方から生ギターの音がうっすら聴こえます。恐らくボーカルのオーバーダビングの時に、ギターも弾いていたのではと思われます。ポールのベースは、ルート音を中心にしたシンプルなプレイに徹しています。楽曲が進むにつれて手数がやや増えますが、特に印象に残るフレーズは登場しません。リンゴのドラムも、ハイハット・オープンのシンプルなプレイに徹しており、間奏の前後とエンディング前にわずかにオカズが入る程度です。ジョージ・マーティンがピアノをオーバーダビングしています。歌中はベースをサポートするようにルート音のみを鳴らし、間奏ではヴォーカルのメロディをなぞるように演奏しています。いずれも単音のプレイですが存在感があって、楽曲に重厚感が加わっています。前述の通り、ヴォーカルはジョンのみで、楽曲全編ダブルトラックになっています。

レコーディングは1963年9月11日に行われ、ベーシック・トラックに5テイク、オーバーダビングに4テイク費やして完成しています。ジョンのダブルトラックのヴォーカルとジョージ・マーティンのピアノが同時にオーバーダビングされていると思いますが、間奏前で一か所間違っています(You hurt me then,you're back againの部分)。同時にオーバーダビングしたジョンのヴォーカルがOKだったので、ピアノのミスは不問になったのでしょうか(笑)。

この曲を初めて聴いたのは「アニメ・ザ・ビートルズ」なんですが、その時からずっと聴くたびに深い郷愁に駆りたてられます。終始単音で弾かれるピアノの重厚な響きと、コーラスもハモリもなくただ一人淡々と歌うジョンのヴォーカルが、心の中の切なさスイッチをオンにしているんだと思います。この曲についてマーラーの『大地の歌』を引き合いに出された評論に対して、ジョンは「何を言っているのか分からん」的なコメントを残しております。僕的にこの曲は、小学校などの下校の曲でお馴染み、ドボルザークの「家路」とシンクロしており、きっとジョンに「何を言ってるのか分からん」と言われるのだろうなって思います(笑)。

家路

大地の歌(時間のある人向け)