「From Me To You」「She Loves You」で学んだコード進行の妙が、この曲でも随所に使われています。
AメロのキーはGメジャーですが、ダイアトニックコードにはないBメジャーを効果的に使っています("When I say that something,I wanna hold your hand"の"hand"の部分)。BメロはCメジャーに転調します。2人で作曲していた時のエピソードで、Bメロの冒頭でポールがDマイナーを弾いた時にジョンが「これだ!」と叫んだそうですが、この転調のおかげで楽曲に深みが増しましたよね。また、キーGメジャーとCメジャーのダイアトニックコードに共通するコード(Cメジャー)を経由した後にDメジャー→Cメジャーを繰り返す、キーGメジャーへの戻り方が秀逸ですよね。Aメロ→Bメロ→Aメロの流れが出来上がった後に、Bメロ→Aメロに戻る際のDメジャー→Cメジャーの繰り返しをイントロにも採用した感じでしょうか。
レコードでは非常にトリッキーに聴こえるイントロですが、前述のDメジャー→Cメジャーの繰り返しをそのまま頭に持ってきただけだと考えると、トリッキーに聴こえるのは偶然の産物ではないのかと思えてきます。Dメジャー→Cメジャーの繰り返しは3拍目の裏から始まりますが、レコードではカウントなしに始まるから1拍目の頭から始まったように錯覚して、それにシンコペーションが相まって歌いだしのタイミングが取りずらくなっています。それに加えて、Dメジャー→Cメジャーの繰り返した後4拍目から歌いだすのですが、楽曲最初のイントロの後だけ歌いだしが3拍目からになっており、歌いだすタイミングを逃す人が続出する原因になっていると思われます。そう考えると、やっぱイントロのマジックは狙ったものなんかなぁと思います。
ジョージはカントリー・ジェントルマン、ジョンはリッケンバッカー325を使用しています。「Love Me Do」から楽曲レビューを始めて、使用楽器も考察していますが、ここまではジョンが明らかに325を使っていると思われる曲は意外に少ないです。その325ですが、ジョン特有のハードなピッキングが生み出すドライブ感が半端なく、楽曲のノリを作っているのは間違いなくこのギターです。ひょっとしたら、ビートルズのレコーディング史上で325のベストプレーはこの曲ではないでしょうか。2人のギターの武骨なサウンドとトリッキーに聴こえるイントロのインパクトは絶大で、アメリカでこの曲がNo.1になったのは2人のギターのおかげではないかと思っています。ポールはこの曲でベースのコード弾きを披露しています。Bメロの部分がそうですが、コード弾きでも鳴らす音を微妙に変化させて工夫の跡が見られます。リンゴは楽曲の流れに応じてドラムに変化をつけていて、他の3人のメンバーは演奏していてさぞかし気持ちが良かったことだろうと思います。
キャピトル・レコードからの販売まで時間がかかりましたけど、彼らを売り出すための全面的なバックアップを得ることができ、しかもアメリカでのデビューシングルが「I Want To Hold Your Hand」、これ以上ないタイミングでのアメリカデビューになったと思います...VEEJAYレコードでのデビューはなかったことでお願いします(苦笑)。