本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

Kansas City / Hey-Hey-Hey-Hey!

この曲のオリジナルは、1952年にリリースされたリトル・ウィリー・リトルフィールドのバージョンです。リトルフィールドのバージョンは淫靡な雰囲気が漂っており、ビートルズがデビュー前にレパートリーにしていた「Young Blood」のオリジナル・バージョンを連想させます。リトルフィールドのバージョンは「K.C.Loving'」のタイトルでリリースされ、1959年にウィルバート・ハリソンがこの曲をカバーした時にタイトルを「Kansas City」に改めてリリースされています。このハリソンのバージョンは商業的に大成功し、ビルボート誌のチャートで7週連続で1位を記録しました。ハリソンのバージョンがヒットする前の1955年、リトル・リチャードはこの曲をレコーディングしていました。しかも2バージョン。最初のバージョンはレコーディングから随分経過した1970年にリリースされており、オリジナルに近いアレンジで演奏しています。もう1つのバージョンでは大々的にアレンジを変更しており、楽曲の後半部分は「Hey, hey, hey, hey」のフレーズが登場します。アルバム収録曲として1958年にリリースされ、翌1959年4月にシングルカットされて全英26位を記録しています。リチャードは「Hey, hey, hey, hey」のフレーズを独立した楽曲として1956年にレコーディングし、シングル「Good Golly, Miss Molly」のB面曲として1958年に発表しています。

ビートルズはリトル・リチャードの2つ目のバージョンをカバーしています。基本的にリチャードのバージョンに忠実に演奏していますが、リチャード版では間奏前に「Hey, hey, hey, hey」のフレーズが登場するのに対し、ビートルズ版では間奏後に「Hey, hey, hey, hey」のフレーズが登場します。1964年10月18日のレコーディングでは2テイク録音して、1テイク目が採用されています。デビュー前からのレパートリーだけあって、楽曲のアレンジとメンバー4人の演奏は堂々たるものです。特にジョンとジョージのギターのコンビネーション、ジョージのギターソロの独創性は光ります。また、この曲でもジョージ・マーティンがピアノで参加しており、同じ日に録音された「Rock And Roll Music」同様に少ないテイク数でOKを出せる腕前には感心します。僕の知る限り、この曲のレコーディングは歌と演奏を同時に行う一発録りのハズですが、楽曲後半にハンドクラップが入ってることや、モノミックスとステレオミックスでピアノのフレーズが違っていることとか、記録には残っていないもののオーバーダビングの行程はあったと思われます。

メンバーの楽器演奏だけで相当楽しめる曲だと思いますが、最大の聴きどころはポールのヴォーカルに尽きるでしょう。リトル・リチャードは高いキーを歌う時でも大人の余裕を感じさせるのに対し、ポールのヴォーカルは若さを目一杯押し出して、本家とはまた違ったテイストがあります。高くて野太いポールのヴォーカルを楽しめる、彼らのレパートリーでも屈指の曲と言えるでしょう。ジョンとジョージのコーラスとの掛け合いも楽しく、デビュー前のライブ演奏では大盛り上がり大会になったことは間違いないでしょう。ビートルズのライブパフォーマンスの質の高さをうかがい知れる名演だと思いますが、『Beatles For Sale』リリース後はセットリストに入ったことがないですよね、多分。

リトルリチャード版 バージョン1

リトルリチャード版 バージョン2

リトルリチャード「Hey-Hey-Hey-Hey!」

リトル・ウィル・リトルフィールド「K.C.Loving」

ウイルバート・ハリソン版