本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

Bad Boy

ビートルズのレコードのアメリカでの販売元であるキャピタル・レコードは、英国オリジナルのビートルズのアルバムに関係なく、勝手に編集盤をバンバン発売していました。アルバム『Beatles For Sale』の発売から約半年経過し、キャピタル・レコードは新しいビートルズの作品の発表を急ぎました。キャピタル編集の『Beatles For Sale』の収録から漏れた曲などをかき集めたものの、当時のアメリカのレコード業界標準の12曲にあと2曲足りないことから、キャピタル・レコードはビートルズに新曲2曲を要請しました。そこでビートルズはデビュー前に演奏し慣れたカバー曲2曲をレコーディングし、その2曲を収録したキャピタル・レコード編集のアルバム『BeatlesⅥ』が発売されました。この時に録音した2曲が「Dizzy Miss Lizzy」と「Bad Boy」です。「Dizzy Miss Lizzy」は英国オリジナルの『Help!』にも収録されましたが、「Bad Boy」は1966年に発売されたベスト盤『A Collection Of Beatles Oldies』に収録されるまで、イギリスでは未発表でした。

「Dizzy Miss Lizzy」「Bad Boy」ともに、約1年前にレコーディングした「Slow Down」と同じLarry Williamsのカバーです。Larry Williams版の「Bad Boy」は1958年シングルとして発売されましたが、主たるヒットチャートにはランクインしなかったようです。キャピタル・レコードの一方的な理由でレコーディングすることになったため、メンバーとしては気乗りしなかったのではと思うのですが、意外とキッチリ仕上がっています。同時期にレコーディング中だった、アルバム『Help!』に収録する目論見があったからかもしれません。

レコーディングは1965年5月10日に行われ、4テイクで録音終了しています。最初の3テイクはジョンのガイド・ヴォーカル入りでベーシックトラックを録音し、4テイク目でジョンのヴォーカルといくつかの楽器をオーバーダビングしています。ジョンは動きの多いフレーズを楽曲全編で演奏しています。ショートスケールのリッケンバッカー325ならではのフレーズで、通常サイズのギターだったら、一曲通して演奏するのは相当厳しいと思われます。ジョージはテネシアンを演奏していると思われますが、深みに欠けるペラペラのサウンドで少々安っぽく聞こえます。その辺を解消するために、同じプレーをオーバーダビングしたのかもしれません。ポールも動きのあるフレーズを演奏していますが、芯のないサウンドでハッキリと聞き取ることができません。リンゴのドラムはシンバルを鳴らしっぱなしの賑やかなプレーで、手数も多く小気味よいフレーズがキマってます。メンバー4人のいつも楽器だけで充分リッチなサウンドだと思いますが、ポールがエレピ、ジョンがオルガン、リンゴがタンバリンをオーバーダビングしています。ジョンのオルガンどうにもよく分からんのですが、歌のバックでうっすら聞こえるのがそれなんかなぁって思っています。

バックの演奏だけでもかなり充実しているのに、それにも増してジョンが圧巻のヴォーカルを聞かせてくれてます。Larry Williamsは脱力系のヴォーカルなのに対し、ジョンは火傷しそうなくらい熱いヴォーカルを披露しています。後年のジョンのヴォーカルスタイルとLarry Williamsの楽曲は相性が良さそうなんですが、ジョンが脱力系ヴォーカルに移行するのはもう少し先のことです。アルバム『Help!』を境にカバー曲を演奏しなくなって、1966年の8月でコンサート活動を終了、おまけにジョン自身のヴォーカルスタイルの変化と、ジョンの熱いヴォーカルを聴く機会は次第に減って行きます。