本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

If I Needed Someone

ジョージの影響を受けて12弦ギターを取り入れたザ・バーズの「The Bells Of Rhymney」「She Don't Care About Time」に触発されて、ジョージが作ったのが「If I Needed Someone」です。『Rubber Soul』のレコーディング前の8月頃からザ・バーズとの交流が始まったようで、前述の2曲に影響を受けたことをジョージは公言しており、ザ・バーズとの良好な関係性が窺えるエピソードです。また、ホリーズからシングル曲提供の要請をうけて、「If I Needed Someone」がビートルズから提供されています。『Rubber Soul』の発売日に、ホリーズの「If I Needed Someone」がシングルとしてリリースされ、全英シングルチャートで20位まで上がっています。しかしながら、当時のホリーズのシングル曲の中では最も低調で、落胆したジョージはホリーズのバージョンに対して辛口なコメントを残しています。これに関しては、ホリーズ的には「レノン/マッカートニーの曲じゃないのかよ」的な言い分はあるのかもしれませんが、完全に憶測で書いていますので、話半分に聞いてください(爆)。

この曲のレコーディングは1965年10月16日、「Day Tripper」に次いで行われました。ベーシックトラックのレコーディングは1テイクで終了し、10月18日にリード・ヴォーカルなどをダビングして完成しています。ちなみにホリーズのバージョンは、ビートルズと同じくEMIスタジオで1965年11月17日にレコーディングしています。

リッケンバッカー360/12が使用された、ビートルズ時代のジョージが作曲した唯一の曲です。ジョージのコメントによると作曲した時のキーはDでしたが、ギターの7フレット目にカポタストをしているので演奏時のキーはAです。楽曲全編で演奏されるリフは、D7のコードフォームで小指だけを動かして弾いています。バーズのロジャー・マッギン公認の元、リフのアイデアを拝借したそうですが、信憑性は定かではありません。リフ自体が秀逸なのに加え、12弦ギターならではの煌びやかなサウンドが非常に印象的です。ジョンはフェンダーストラトキャスターを演奏しています。ビートルズストラトを使用した全作品中、ストラトならではのシャリ感をもっとも感じる曲だと思っています。コードストロークが中心ですが、間奏のバッキングでは高速のアルペジオ風のフレーズも飛び出してイイとこ見せてます。コーラスしながらの高速アルペジオは困難だったのか、日本公演では間奏のバッキングではなく、ジョージのソロ・ヴォーカルのパートでアルペジオ風のフレーズを披露していました。ジョージの曲ではやたらと張り切るポールのベース伝説は、この曲でも健在です。同じフレーズを繰り返さず、少しずつフレーズを変化させるのがポールのベースの特徴の1つですが、この曲では作りこんだフレーズを忠実に演奏しています。リッケンベースならではの硬くてゴツイ音は、12弦ギターのサウンドに負けないくらいの存在感があります。ドラムは『Rubber Soul』収録曲の中ではシンプルな演奏です。メロの「If I Needed Someone」の直前で両手打ちを挟む以外は、バックビートに徹しています。タンバリンが大き目にミックスされているので、ドラムの音が少し埋もれてしまっています。

ジョン・レノンポール・マッカートニーを従えてメイン・ヴォーカルを張れるのは、ビートルズ時代のジョージとリンゴのみに許された特権です。3声のヴォーカルは彼らの得意とするところですが、この曲でもかなりの部分で3声のヴォーカルを聞くことができます。下のパートから、ジョージ、ジョン、ポールの順でヴォーカルを重ねており、真ん中のジョンのパートが一番難易度が高めです。ダブルトラックの効果もあって、3人のヴォーカルが音のカタマリのように聴こえます。ジョンやポールと較べると見劣りするものの、前作『Help!』収録の「I Need You」「You Like Me Too Much」ではフワっとしていたジョージのヴォーカルも、自身のスタイルが確立しつつあるように思います。

この曲以降ビートルズの楽曲で12弦ギターは殆ど使われなくなり、12弦ギター・サウンドを総括するような楽曲をジョージ自身で作曲したことが、なかなか感慨深いなぁと思う次第です。