本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

There's A Place

1963年2月11日のレコーディングでは午前のセッションの一番最初に演奏されました。10テイク目がOKテイクで、午後のセッションでハーモニカをオーバーダビングして完成しました。

Youtubeで第1テイク?を聴くことができます。アップされている動画のタイトルを鵜呑みにして良いのか悩みますが、楽曲の仕上がり具合から第1テイクでなくとも、スタジオでのアウトテイクの可能性は高いです。楽曲の構成やメロディはリリースされたテイクと同じなんですが、違いもところどころあります。まず、ポールのベースのフレーズ。サビ以外、基本的に8分音符を鳴らし続けていて、ちょっとうるさい(苦笑)。そしてジョンのギター。リリースされたテイクではJ-160Eを弾いていますが、この第1テイクではリッケンを弾いてると思われます。明らかにリッケンの音です。レコーディングの途中でギターを変えるのか?って素朴な疑問は残りますが、リッケンを弾いていて何か違うと思ったんでしょうか(笑)。

ジョージはデュオ・ジェットを弾いています。ビートルズハイレゾ音源を初めて聴いた時、もっとも衝撃を受けたのはこの曲でした。それまで非常に聞き取りにくかったジョージのギターフレーズが、鮮明に聞き取れたことは驚異でした。楽曲のテーマと言うべきフレーズも弾いていますが、それ以外は低音弦中心の渋いプレーが続きます。レコーディング当時20歳にもなっていなかった若造が、よくこんなフレーズ考えたなって思います。ポールのベースは、8分音符連打を改め音の長さに変化をつけて、初期のポールの典型的なスタイルで弾いています。ルート音中心のプレーは良く言えば縁の下の力持ちに徹したってことですが、メインヴォーカルでもないのにシンプル過ぎるフレーズは弾いていてあまり面白くなかったんじゃないかなぁ(笑)。前述の通り、ジョンはJ-160Eをアンプに繋いで鳴らしています。リンゴはハイハットを閉じてシンプルなプレーに徹していますが、楽曲ブレイク後のフラムを絡めたプレーと、エンディング近くの乱れ打ちが聞かせどころでしょうか。ジョンはハーモニカで、ジョージのギターと同じフレーズを吹いていますが、「Please Please Me」同様フレーズ自体はギターで考えられたものじゃないかと思います。

「Please Please Me」と共通点の多いコード進行ですが、楽曲自体の完成度は「Please Please Me」に及びません。デビュー時からオリジナル曲にこだわっていたものの、曲作りのスキルが追い付いていなかった頃の作品と言えますが、2分弱の曲のあちこちにダイヤの原石を見つけることができます。楽曲の大半はジョンとポールが高低差のあるハーモニーを聴かせてくれます。どっちかというとポールのパートの方が耳に残るのですが、要所要所で登場するジョンのソロ・パートの黄昏ヴォーカルの破壊力がハンパではありません。そしてこの曲最大の聴きどころは、ミドルのジョンとポール&ジョージの掛け合いです。ジョンが"In my mind there's no sorrow"と歌い、ポールとジョージが"Don't you know that it's so?"と応える構図は、特筆するほど音楽的センスに溢れていたりテクニカルなものではありませんが、何故か僕の心の琴線にいい感じで響きます。兄貴が気を利かせて子分に出番をやったものの、何だかんだで美味しいとこは自分が全部持っていく、そんな当時の彼らの力関係が端的に表れた楽曲ではないでしょうか(ホンマか)。

こっちは第1テイク。本当に第1テイクなのか定かでありませんが(苦笑)