本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

All My Loving

1963年7月30日「It Won't Be Long」の次に録音されました。第11テイクにオーバーダビングの第14テイクを重ねたものがマスターテープになっています。

 基本的にキーEのダイアトニックコードで構成されていますが、♭ⅦにあたるDを使っているのが注目点でしょうか。ノンダイアトニックコードなんですけど、聴いていてまったく違和感がありません。あとBメロ(All my loving I will send to you~)のところ、Cm→Cm→E→EではなくCm→CmM7→E→Eとひと捻りいれています。この部分ギターを弾いてみれば分かりますが、3弦が半音ずつ下がっていく流れが非常に美しいです。

演奏の方は、ジョンが弾くリッケンバッカー325の3連カッティングが非常に印象的です。この曲に限らず、リッケンを弾く時のジョンは手首のスナップを利かせたストロークが特徴なんですが、そんなジョンならではのプレーと言うことができると思います。また、リッケン特有のサステインの短いサウンドがこの3連カッティングにマッチしていて、リッケンバッカー社公認のプレーと言っても良いのではないでしょうか(笑)。よく聞くともう一本同じように3連を弾いてるギターがあります(ステレオミックスで聴くと比較的分かりやすいと思います)。音色から判断するとJ-160Eをアンプに通して弾いているのではないかと思います。ジョンがオーバーダビングした可能性がなくはないですが、ベーシックトラックでジョージが弾いていたのはこれで、ギターソロなどカントリー・ジェントルマンでの演奏はオーバーダビングしたものではないでしょうか。

そして、忘れてはいけないポールのベース。歌メロの音階が上がっていけばベースのラインは下がっていくって感じで、あたかも歌メロと対になっているかのようです。このベースラインで特に凄いと思うのは、歌メロと同じように曲の最後までこのラインを歌えてしまえることです。「そんなの耳コピーするのであれば当たり前」って意見もありそうですが、必死になって耳コピーせずとも知らないうちにベースラインを覚えてしまっていることが凄いのです。間奏後の"Tomorrow I'll miss you"のmissの部分のミストーンもバッチリ覚えています(苦笑)。それに加えてジョンのリッケン同様に、サスティンの短いカール・ヘフナーのサウンドがこの曲のベースのフレーズにマッチしていて、こっちの方はヘフナー社公認のプレーと言うことになっています(笑)。このベースラインは右手の指板の上り下りは激しいものの、4ビートのリズムのおかげで演奏しながら歌うのは比較的容易です。と言うことで、世界中のポール・マッカートニー必須の課題曲と言えるでしょう(笑)。

ドラムはオープンハイハットを団扇を扇ぐようなリンゴ独特の叩き方で、シャッフルのリズムを刻んでいます。メンバー4人とも癖の強い演奏をしているにもかかわらず、チグハグな印象を受けるどころか「これしかない!」って風に聴こえてしまいます。これこそがアンサンブルと言うかバンドの醍醐味なんでしょうね。

ポールのヴォーカルはダブルトラックですね。ポールが歌うにしては音域が低めのメロディラインです。間奏後のAメロはポール1人が上下に分かれて歌っており、ライブではジョージが下のパートを担当しています。Bメロの3声のコーラスは上から順にジョン、ジョン、ジョージではないかと思っています。OKテイクとなったテイク11とオーバーダビングのテイク14のメンバーの役割を推測すると、テイク11:ジョン(リッケンで3連&コーラスの真ん中)/ポール(ヘフナー&ボーカル)/ジョージ(J-160Eで3連&コーラスの一番下)/リンゴ(ドラム)、テイク14:ポール(ヴォーカル)/ジョージ(カントリージェントルマンでギターソロ)と考えられることから、テイク14ではジョンは必然的にコーラスを担当したのではないかと思うのです。結果、ジョンは3声のコーラスの2パートを担当していると思うのですがいかがでしょうか。

余計なものを一切削ぎ落したシンプルの極みとも言える名曲だと思いますが、かと言って文部省唱歌を思わせるような清廉潔白さはありません。本音の部分ではエロいことしか考えてない下世話なポップソングであるからこそ、当時の女性ファン達があれ程までに熱狂したのでしょう。ジョン大絶賛のこの曲は、僕の葬式に流す曲メドレーに欠かせぬ一曲であります。