本家☆にょじやまラーメン(音楽味)

ビートルズを中心に、音楽素人のディスクレビューです。

Anytime At All

アルバム『A Hard Day's Night』のレコーディングは、映画の撮影が始まる直前の1964年3月1日で一旦終了し、4月16日にタイトル曲「A Hard Day's Night」がレコーディングされたのを挟み、6月1日と2日で「You Can't Do That」を除くB面曲が一機にレコーディングされています。6月1日と2日にレコーディングされた曲は、アルバム『A Hard Day's Night』のB面もしくはEP盤「Long Tall Sally」に収録されることが最初から決まっており、メンバーのモチベーション的には決して高くなかったのではと思うのですが、なかなかの力作ぞろいとなりました。

 レコードではB面のトップを飾る「Anytime At All」は、6月2日にレコーディングされました。昼間にベーシックトラックとジョンのヴォーカルを7テイク録音し、夜のレコーディングでミドルエイトやポールの掛け合いヴォーカルなどを録音して第11テイクで完成しました。ジョンとポールの掛け合いヴォーカル、低音ピアノや12弦ギターの使用など、美味しいところテンコ盛りの当時のビートルズの作風のダイジェスト版とも言える作品に仕上がりました。

リンゴの一撃で楽曲が始まるんですけど、スネアとバスタムの合わせ技がいい味を出してるんですよね。硬質だけど深みのある一撃は、楽曲の質を左右するくらい影響力のある音だと思います。この一撃は楽曲中もブレイクの際に度々登場します。これ以外のプレーは、アルバムの他の楽曲と同じくオカズが全くありませんが、テーマではシンコペーションを決めています。ジョンの楽曲では大人しいと定説のポールのベースは、ルート音中心の定説通りの大人しいプレーです(笑)。上述のシンコペーションでリンゴと合わせてるのが、この曲の聴かせどころでしょうか。ジョンが弾くJ-160Eは、オフ気味であまり前面に出てきません。歌中にボロロンッと聴こえるガットギターは、恐らくジョージが弾いていると思われます。「無くてもいいんじゃない?」って印象も受けますが、無くしてしまうと楽曲の雰囲気は随分変わるんでしょうね。

ジョージのリッケンバッカー360/12は、テーマではギターリフを、歌中はコードを鳴らしています。難易度が高いプレーではありませんが、何しろギター自体の音が際立っているので強烈に印象に残ります。ピアノはポールがオーバーダビングしたものと思われます。低音の和音を白玉で鳴らすシンプルなプレーが中心です。プレーはシンプルですが楽曲への影響力は抜群で、夕日に向かって叫びたくなる感が楽曲全編に漂っているのは、このピアノのおかげと言えるでしょう。間奏はピアノと12弦ギターの共演ですが、演奏自体はローテクでも2つの楽器が絡みあうことでリッチに聴かせるセンスの良さが光ります。バンドのアンサンブルはこうあるべき!ってのを見せつけられてるようです。

ジョンのヴォーカルは、テーマ(強)とメロ(弱)の歌い分けが絶妙で、この高低差にやられた女性ファンは枚挙にいとまがないでしょう。いや、女性ファンどころがメロメロになった男性ファンも相当いるはず、僕を筆頭に(爆)。"If you need a shoulder to cry on,I hope it will be mine"って言われた日にゃ、エプスタインなんか速攻でジョンの肩に突進したんじゃないですかね(汗)。

「There's A Place」「Not A Second Time」から続く夕焼け三部作(勝手に命名)の集大成ともいうべき作品で、世界中の夕暮れ時の心のBGMとしてこれ以上の作品はないと断言します。当然のことながら、自分の葬式で流してほしいメドレーにも堂々エントリーしており、僕はこの曲を愛してやみません。